夏の回顧録

アオイロノペン

夏よ

夏を見たかい

三日月色したオクラの花

青い水田をわたる風の波

入道雲から突如あらわれる

飛行機雲の白い放物線を


夏を見たかい

焼け落ちたように実る向日葵

青と朱のストライプの夕暮れ

手に入れた途端に脆く崩れる

枯葉色した空蝉を


暑い熱いと愚痴りながら

水よ氷よと渇きながら

真っ赤な太陽の下を歩いてみたかい

冷房の風にうんざりしながら

外よりマシよとぼやきながら

陽射しを恐れ

ブラインドすら下ろして

黒い画面の中に表れる

偽物の夏を享受して

電光掲示板の数字を睨んでないで


ざらつく砂を足の裏に

ひりつく日差しを小麦色の肌に

サンダルの先から青い爪先が

人魚の鱗のように煌めくだろう

夏に吹く風は強く

みっしりと繁った葉は

風にシャラシャラ鳴るだろう


花火を見たい

突然の夕立に走りたい

濡れたねって笑い合いたい

君はいつもそこに居た

当たり前の顔をして

暑苦しくて

刺激的で

退廃的で

いつも少し哀しい


夏よ

夏よ

夏よ

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