第1話(中編)――「疾走の支度――スループと交易許可証」

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『大航海時代を逞しく生き抜く戦争孤児アイユーブ』(第一章第1話)【登場人物・人物相関図】です。

https://kakuyomu.jp/users/happy-isl/news/16818792438806537831

『大航海時代を逞しく生き抜く戦争孤児アイユーブ』(第一章第1話)【作品概要・脚脚注※※】です。

https://kakuyomu.jp/users/happy-isl/news/16818792438806421645

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前書き

海賊を振り切るため“速さ”に賭けたアイユーブは酒場でスアードの仲介によりディヤーブと会い、フォケーア経由の用件を引き受ける見返りに20ノットのスループと、地中海諸港で有効な交易許可証を得る――課税(売買ごと3%)も踏まえた現実的な計算が、若き商人の胆力と用意周到さを浮かび上がらせる。


本文


 アイユーブはここの相場を見積もり、乳香10荷が1ドゥカートで売れると考えた。


 キオスでは1ドゥカートでマスティハを30荷仕入れる事が出来る。ボロい儲けのようだが、海賊に襲われたら積み荷はもちろん命まで取られかねない。それを考慮すると見合った利益と思われる。


 アイユーブはこの話を請け負い、カーミルと相談した。カーミルは能天気に「おい、早く行こうぜ。キオスまでなら1ヶ月で往復できるからな」とアイユーブを急かす。


 しかし、アイユーブはカラムが与えてくれたバルシャ船で行くつもりはない。この船は遅いのだ。海賊に襲われた場合、逃げることも出来ない。もっと早い船がどうしても必要なのだ。


 酒場のスアード「アイユーブの初恋の相手」に相談することにした。カーミルを連れて酒場に行くと今度はスアードと会うことが出来た。


「アイユーブさん、さっきも来てくれたんだってね」


「うん、さっきは特に用はなかったんだけど、今度は用があるんだよ」


「どんな用なの?」


「うん、スアードのお客さんで誰か早い船を持っている人を知らないかい?」


「早い船が必要なの?」


「うん、そうなんだ。マスティハを仕入れにキオスまで行くんだけど、途中で海賊に襲われたときにね。早い船でないと逃げられないだろう?」


「そうか。ディヤーブさんなら、今来ているから聞いてあげようか?」


「うん、頼むよ」


デイヤーブさんが話に加わった。


ディヤーブさんがアイユーブに聞く。


「キオスに行くのか?」


アイユーブが答える。


「はい、そうです」


「途中でフォケーア(脚注※③を参照されたい)に寄って欲しいんだ」


「あそこの倉庫に明礬みょうばん「染料の媒染剤」を100荷ばかり置いているんだよ」


「それを取ってきてくれるんなら早い船を貸してやっても良いぜ」


「どんな船なんですか?」


「帆走スループ(水夫5人乗り、800荷積載可能、20ノット)……(脚注※④を参照されたい)だよ」


「こんな早い船は他に無いぜ。荷物は800荷しか積めないけどな」


「キオス⇔イスタンブールなら1週間で往復できるよ」


「了解しました。フォケーアに寄って来ます」


「ちょっと待て。お前はオスマン・トルコ帝国発行の交易許可証を持っているのか?」


「いえ、持っていませんが、そんな物が要るのですか?」


「お前たちがやっているオスマン・トルコ市場内の売買なら必要ない」


「だが、ヴェネツィアとかジェノヴァあるいは地中海の国で売買するならあったほうが良い」


「俺ももう年だ。他所の国には行かないからお前にやるよ」


 ディヤーブはアイユーブに交易許可証をただでくれた。


「何から何まで有難うございます。フォケーアはともかくとしてキオスはジェノヴァが支配していますが、ジェノヴァやヴェネツアでも使えるのですね」


「もちろんだ。税金は取られるけどな」


「税金はいくらくらい取られるのですか?」


「売買の都度3%取られる」


「了解しました」


後書き

速度・法的手当・航路設計という“勝つための基盤”が揃い、次章では人員と積荷の具体化へ――スループの機動力と制度理解を武器に、リスクを利益へ転じる商戦の幕が上がる。

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