社畜だった俺、異世界転生して最強の鑑定スキルでホワイトギルドを築き上げたら、ワケアリ美少女たちが次々と入ってきて、スローライフが送れそうにありません
@123te
第1話 プロローグ ~社畜、死して異世界へ~
「……う……」
意識がゆっくりと浮上する。
ずきん、と鈍い痛みを訴える頭を押さえながら、俺はゆっくりと目を開けた。
最初に目に飛び込んできたのは、見たこともないほど美しい、ステンドグラスの天井だった。
「目が覚めましたか、
透き通るような、それでいてどこか機械的な声が響く。
声のした方へ視線を向けると、そこにいたのは、純白の衣をまとった、性別も年齢も分からない、人間とはかけ離れた存在だった。光そのものが形を成したような、神々しい姿。
「……あなたは?」
「私は、あなたの世界で言うところの『神』。そして、あなたをこの世界『アースガルド』へと転生させた者です」
「転生……?」
混乱する頭で、神を名乗る存在の言葉を反芻する。
俺の名前は相川徹。三十代半ばの、どこにでもいる平凡なサラリーマン……いや、『社畜』だった。
連日の徹夜作業、鳴りやまない上司からの鬼電、休日出勤は当たり前。そんな生活の果てに、俺は会社のデスクで意識を失った。
「そうか……俺、死んだのか……」
「はい。あなたは過労により、その短い生涯を終えました。あまりに不憫でしたので、私の独断で、新たな世界で第二の人生を送る機会を与えることにしたのです」
神は淡々と告げる。
死んだことに、不思議と悲しみはなかった。むしろ、あの地獄のような日々から解放された安堵の方が大きい。
「……ありがとうございます。でも、なぜ俺を?」
「あなたの魂が、誰よりも『平穏』を渇望していたからです。このアースガルドは、剣と魔法が支配する世界。魔物が蔓延り、人々の間では争いが絶えません。そんな世界だからこそ、あなたのような魂が必要だと判断しました」
平穏、か。確かに、俺が一番欲しかったものだ。
毎日終電に揺られ、狭いアパートに帰って、コンビニ弁当をかきこんで寝るだけの日々。そんな俺が夢見ていたのは、海辺の小さな家で、猫でも飼いながら、のんびりと暮らすことだった。
「第二の人生、ね……」
悪くない響きだ。いや、むしろ最高の提案かもしれない。
「それで、俺はこれからどうなるんですか?またゼロからやり直すとか?」
「いいえ、あなたには特別な力を授けます。いわゆる『チートスキル』というものです。不憫なあなたへの、私からのささやかなプレゼントだと思ってください」
神が指を鳴らすと、俺の目の前に半透明のウィンドウが現れた。ゲームのステータス画面のようなものだ。
【相川徹】
職業:なし
スキル:神眼鑑定
「『神眼鑑定』……?これは?」
「その名の通り、あらゆるものの情報を見抜くことができるスキルです。人や物のステータス、隠された価値、才能、真偽……すべてを見通すことができます」
「なんでも……?」
試しに、目の前にいる神に向けてスキルを意識してみる。
【神】
種族:創造神
詳細:この世界の創造主。最近の悩みは、下級神たちの業務怠慢。趣味は異世界人の魂をスカウトすること。
「……マジか」
とんでもない情報が見えてしまった。神のプライベートまで丸裸だ。
俺が若干引いていると、神は咳払いをして話を続ける。
「と、とにかく!その力があれば、あなたはこの世界でどんな成功も掴むことができるでしょう。勇者として魔王を倒し、英雄になるもよし。大商人として富を築くもよし。王となって国を治めるもよし。あなたの望むままに生きなさい」
英雄?大商人?王?
どれも全く興味が湧かなかった。俺が望むのは、そんな大層なものじゃない。
「……神様、一つだけ聞いてもいいですか?」
「なんでしょう?」
「この世界に、『ブラック企業』みたいなものはありますか?」
「ブラック……?ああ、労働者を不当に搾取する組織のことですね。ええ、残念ながら。ギルドや騎士団、国によっては、あなたのいた世界以上に過酷な場所も存在します」
神の言葉に、俺は心の底から安堵のため息を漏らした。
そして、固く、固く決意した。
「決めた。俺、この世界で『ホワイト企業』ならぬ、『ホワイトギルド』を作ります」
「……は?」
神が、初めて素っ頓狂な声を上げた。
「そして、絶対に定時で帰って、のんびりスローライフを送ってみせる。もう二度と、社畜なんてごめんだ!」
これが、俺の第二の人生の、確固たる目標になった瞬間だった。
まさかこの決意が、後に大陸中のワケアリ美少女たちを惹きつけ、俺の平穏な生活を根底から覆すことになるなんて、この時の俺は知る由もなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます