皇帝の調色師 昇龍を白は彩る
干野ワニ/角川文庫 キャラクター文芸
序
「なんだよその白い衣。今日もまた誰か亡くなったのか?」
そう言って
この正月で八つになったばかりの彩玉は、真っ白な
すると隣にいた少女が、先に不満げに声を上げた。
「ちょっと
「でも白って普通は喪服だろ?」
意地の悪い薄笑いを返す少年へ、少女は
「彩玉、うちの三兄がごめんね。その白い礼衣、清らかでとってもすてきよ」
そう微笑んだ少女は、真っ赤な晴れ着をまとっていた。午後の明るい陽光が、
「……ありがとう。あなたの
「ふふ、ありがと。朱色って、ちょっと派手すぎる気もするんだけど」
その屈託のない笑みの輝きが、いっそう彩玉の心に影を落とす。
なぜ自分は、白氏なんかに生まれたのだろう。白氏に生まれたばっかりに、こんな祝いの席ですら、いつも地味な白い礼衣をまとわねばならない。
──私ももっと、きれいな色の礼衣を着たかったのに……。
悲しくて、悔しくて、
もっと、もっときれいな色が──。
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