キミは八月の中にいる。

藍沢

Prelude

『今日の岐阜市での気温は35.5度、記録的な猛暑となっています。熱射病にお気を付けください──。』

 蝉の声の響く八月の晴天。日差しと照り返すアスファルトに蒸されて、私の体中から汗がだらだらと溢れ出してくる。せっかく部活着から制服に着替えたというのに、汗で濡れたワイシャツが肌にぴったりと張り付いて着心地が最悪だ。こんな日に限って、外周をいつもより多くすることになるなんて。

 襲い掛かってくる熱波にやられて、足取りがだんだんと重くなっていく。眩暈めまいがして、視界がぐらっと揺れる。足がもつれて、私は道路に倒れこんだ。目の前が真っ暗になった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る