第10話

「タイムマシーン」




第8話




「Dedicated to my Best Friend..太陽の君へ。」




あの初めての戦いから数ヵ月が過ぎ、この北の阿寒にも、暑い日々がやってきた。あれから、しばらく、カリンパさんの姿を見ていないが、元気かな、なんて、ふとした時に思う。





そして、シルバの来襲の件だが、あれ以来、髑髏の騎士達は来ず、黄金の騎士団の隠れ家であるアイヌコタンの場所が知られる事はなかった。




それは、どうやら、奴が手柄を一人占めしたかったらしく、他の仲間には教えていなかったかららしい。


奴の汚い欲望の塊である性格が逆に俺達に運をもたらした。




「アドニス、起きて! 朝だよ~!」




獅子丸とベッタリくっつき合いながら気持ち良さそうに熟睡している。




「アドニス~!獅子丸~!」




「むにゃむにゃ、、お! おはよう、優!」




「クオ~ン」




獅子丸は大好きな主人であるアドニスが起きると、とても嬉しそうに甘え声を出し、お気に入りの黄色い大きなタオルを咥えている。




「そうだ、優、今日、任務休みで自己訓練の日だから、久々に街にでも繰り出さないか??」




俺も丁度、気分転換したい気分だったので、二つ返事で一緒に出かける事にした。




「よし、優、金の鍵を、このモップにつけて。」




僕は言われるまま、モップに鍵をかざした。




すると、モップがほうきに変形し、足を乗せ、シートベルトを安全に巻ける様になった。




「ちなみに、これ、時速数百キロ出るぜ!」




「んじゃ、腹も減ったし、釧路の朝一で、うんめぇ海鮮でも食おうぜ、優!」




「うん!」




俺の刀の色の事など、全く聞いてくる事などせず、彼はいつもの、その太陽の様な真っ直ぐな優しさで、微笑んでくれた。




「空飛ぶのって気持ち良いだろ、ハハハ! 優、中々上手いじゃないか!」




あぁ、こんな時がいつも続けば良いのになと、感じた。




後で聞いたが、この乗り物、横から、未来の技術で空中に溶け込むかの様に乗り手を一般人には見えない様に特殊な蒸気?みたいな物が出る様だ。




何百メートルも上空はまるで、冬の様に寒かったが、見下ろした大地は本当に綺麗だった。




「優、あっちに見えるの阿寒湖だぞ、んで、そっちの大きいのが屈斜路湖。ちなみに、屈斜路湖のクッシー(未確認生物、首長竜)って本当はいるんだぜ?」




「へぇ!」




アドニスと話していると、自分までウキウキとした嬉しい気持ちになる。




数分で、あっという間に、俺達は釧路市内の朝一に着いた。




「さーて!優、レッツゴー!」




「待ってよー!」




アドニスはここでも顔が広い。




「いよ~! 外人の坊や! 今日は良いネタ入ってるよ! 」




噂には聞いていたが、北海道、釧路の朝一、新鮮な大きい魚介が並ぶ。




そして、スキップしながら、鼻歌を歌い海鮮丼のお店へと俺を連れて行った。




「おっちゃ~ん!! 来たよー!」




「おう、アドニス、おはよう! お、新しい友達かい? 今日も沢山、白米炊いてるよ!」




アドニスは笑顔で、店長に、そうだよと言い、メニュー表に目をやった。




俺は一回は北海道の海鮮丼を食べて見たかったので、メニューを隅から隅までジッと


見た。




ウニやイクラ、大きなサーモン、カニに貝類、どのメニューもキラキラとして、とても美味しそうだ。




「おい、優、オーダー決まった?」




とりあえず、俺は店長のオススメと言う色んな具材がのったリーズナブルなのにした。




「優、何値段なんて気にしてるんだよ、これ見てみ、ハハハ!」




アドニスは既に頼んだウニ丼、マグロ丼、海鮮丼を、お先に殆ど食べながら、片手に、・毎晩、お金を咲かせるチョコ・と書かれたパッケージのお菓子をヒソヒソ声で、「これ、かじってみ!」とニヤリとした顔で話した。




あ!




俺はあの日を思い出した。




「アドニスも、あの駄菓子屋で、そのチョコ買ったの?」




と俺が聞くと、「ハハハ!あの婆ちゃん、一見、不気味だよな! でも優しいんだぜ?」




どうやら、黄金の騎士団の一部の者は行った事があるらしい。




そして、彼の財布には、、(!!)




俺が見た事もない様な金額、万札が数十枚も入っていた。




「テヘへ、じっちゃんには内緒だぜ?」




天真爛漫に笑い、アドニスが五杯目に頼んだのは大トロもウニもアワビもたっぷりと、そして、大量の酢飯の彼専用の海鮮丼だった。




「うん、うんめぇー!」




それも、彼にとってはお菓子の様だ、3分もせずに平らげてしまった。




そして、いつの間に頼んだのか、俺にも、もう一杯、高級な丼ぶりを頼んでくれていた。




「俺のおごりだ、食え食え優!」




アドニスに言われ、余りの美味しさに、少食の俺も二杯目をペロリと食べた。




大海原で育った魚介の味はまるで、澄んだ海水の中に包まれた様な不思議な感覚を感じた。





海か、、




(あ、、そういえば海のやつ、元気かな。。)




俺はなるべく考えない様にしていた、愛しい、そして、懐かしい彼女の事を思い出した。




もう、数十年も前の気がする、だが、また、その一方で、今は只の一夜の夢を見ている、そんな感覚もある。




想いにふけっていると、アドニスが八杯目の丼ぶりを食べ終え、俺達は市場を後にした。




「ねぇ、アドニスは恋とかした事はある?」




俺は唐突に聞いた。




きっと、凡人の俺と違って、そっちの方も華やか何だろうな、、




そう思った。




外人特有の美しい金髪に、堀の深い整った顔立ち。 そして、人並外れた強さ、太陽の様な温かさ。。




思えば、この時から、俺は彼に対して、やがて、あの日へと繋がる劣等感を抱き始めていたのかもしれない。。




「全然! おいら、獅子丸や仲間達と旨い物食ってる時が一番幸せだから恋人なんて考えた事ないな~、あ、でも、俺は孤児院で育った時から、こいつを自分の生きる道と決めてきたから、しいて言えば、恋人の代わりに、これが俺の青春だぜ! ハハハ!」




そう言い、彼は自身の黄金の剣を指差した。




「剣一筋に、、剣一筋に生きてきたよ。悪と言えど随分と命を斬ってきた。 。ま!地獄行きでも、仕方ねぇっかな!ハハハ」




何だか日頃、暗い言葉など吐いた彼を見た事など無く、その若さで、その正義感で、多くの葛藤を持ちながらも、数え切れない程、沢山の人達を救ってきたんだろう。。




俺は思わず、彼の方を軽く抱き寄せた。




「死ぬ時は一緒さ、そん時は今度は俺がアドニスを背負って地獄を一緒に歩くよ。」




どんなに妬む気持ちや羨ましさがあっても、俺は痛感した。




俺はアドニスと親友になれて、本当に嬉しいんだと。。大好きなんだと。。




なぁ、アドニス、今、君は今、笑顔でいるかな。




弱かった自分の心を今でも悔やむ時があるよ。





キュン

尊い

ぐっときた

泣ける

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作品コメント

4件


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R太郎

2023年10月30日

y.kato さん、いつも、読んで下さり、しかも、コメントまで、、、本当に嬉しいです! 本当にありがとうございます(*^^*) フフフ、何を隠そう、、私もとある駄菓子屋にて、、、フフフ! 次も速攻で載せるので是非是非、ご覧下されば、とっても嬉しいです(^^) R太郎(*^^*)



y.kato-channel

2023年10月30日

本当によく書けてる話ですよね! 好奇心を刺激する、 面白い作品だと思います! というか、 また読みに来ました! あなたもトラベラー? 岩瀬美里も?


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