第8話

タイムマシーン




第六話




「黄金の騎士団」後編




「おーい! 優! 起きろー! 一緒に飯食いに行こうぜ!」





「あ〜、アドニス、おはよ、、、ウワッ!」




俺は思わず声をあげた。




目の前に何と体長5mはある巨大な獅子が、タオルを咥えながら、お座りして、尾を振りながら、嬉しそうにこちらを見ていた。




「ク〜ン」




「おはよー!獅子丸!」




アドニスは、まるで、生まれたての我が子に接する様に、優しく、その大きな大きな顔を撫でた。




「ハハハ!ワリぃ、ワリぃ! 言い忘れてて、こいつは、おいらの大切な親友の獅志丸って言うんだ! 小さい頃から、いつも一緒に育ってきたんだ!ハハハ!」





そして彼は立て続け様に話した。




「けど、身体のデカさの割に繊細で、こんなに早く獅志丸が懐くなんて、優、お前は良い奴なんだな〜!ハハハ!」





何だか最初はあまりに驚いたが、垂れ目で、子犬の様に甘えん坊で、お気に入り?のタオルを嬉しそうに咥えている姿に愛しさを覚え、俺は「獅志丸、宜しくね。」と、ソッと手を出すと、嬉しそうに顔を何度もペロンペロンと舐めてきた。




そして、ク〜ンと鳴き、腹ばいになり、幸せそうにしている。




俺はその姿が、やはり、妙に愛おしく感じ、先日の事を忘れたかの様に気が楽になれた。




「お!顔色良くなったじゃんか優! 良かった、良かった、ワハハハ!」




豪快に笑いながらも気遣ってくれるアドニス、彼と同部屋になれて、本当に良かったと思った。




ちなみに、昨日、あれだけ大量に食べたと言うのに、アドニスは、宴の残り物の、大きな七面鳥に、50cmはある太いフランスパンをバターやら、チーズ、ジャムをたっぷりとつけながら、ガツガツと食べている。




確かにムキムキだけど、まだ、15歳位の彼を見て、「ねぇ、どうして、アドニスは太らないの?」と聞いてみた。




すると、「ヘヘッ、優、これ、見てみ!ワハハハ!」




体重計?




155kg




ポンドじゃなくて?




確かに体重計は155kgと示している。




俺が呆気に取られていると、アドニスは無邪気に笑いながら話した。




「おいら、ミオスタチン異常って体質で、何か筋肉がメチャメチャ詰まってるんだ! 後、ADHDで、いっつも、動いたり、話したりするのが大好きなんだ、ワハハハ!」




正に超人だ、、




俺は何故だか、彼の事が羨ましいと、この時から、少しずつ思う様になった。




そして、、




話は変わり、




昨日の夕方、アランさんに導かれ、俺は長老から、呼び出され、騎士団としての武器を選びに、とある店を訪れた。




「優や、昨日は良く寝れたかの?」




長老は不思議な人だ、、




何故か話す声がぽわ〜っと、心地良く頭に入って来るのだ。




「さて、では、店に行こう。」




アイヌコタンを歩く事、数分で、とある小さなお土産屋さんに着いた。




ん? ここが? こじんまりとして、木々で出来た古い外装をしていた。




「〜、〜、、〜、、」




長老が何か呪文の様な言葉を店の裏側の壁に手を触れ、唱えると、カタン、ゴトンと、壁がパズルの様に、動き出し、入口が開いた。




オォ〜、、




呆気に取られていると、中は100m四方もの広さがあり、凄い量と種類の刀や銃、様々な未来兵器が並んでいた。




アランさんの朱い刀に似た物や、金色の剣、本当に様々だ。




その中で一際、俺は何故だか、不思議と、一本の黒刀に、興味?を持ち、自然と手に取ってみたくなった。





「少年、その刀に何かを感じたかい?」




振り返ると、ルリシビと名乗る大柄な濃いヒゲをした、中年男性(おそらく、アイヌ)が立っていた。




「はい、何となく、、」




俺が一言、そう答えると、ルリシビさんは、ガラスの戸を開け、その黒刀を持ってみなさいと、渡してくれた。




すると、、




黒い刃に、血管の様に紫色の波紋が浮かびだした。




「こ、これは、、」




長老が何か少し険しい顔をし、その刀を見た。




そして、再度、俺に「この刀に直感的に惹かれたのかの、優や?」




と同じ質問をしてきた。




先程と同じく、答えると、何か、球体の様な物を大切に持ってきた。




「長老、、、」




ルリシビさんが心配そうにする中、長老は、真っ直ぐな瞳で、「この水晶の中に、何が見えるかの?」




と問いかけてきた。





「ウワッ!!」




ハァハァ、、




「何が見えたのじゃ優や? ルリシビ、温かいJapanの茶を用意してくれ。」




「〜が、〜で、〜のを見ました。。」




俺は余りにも、驚き、背中を、アランさんにさすってもらった。




「優、落ち着いて、さ、温かいお茶だよ。」




と、彼はまだ震えの止まらない俺に優しく微笑みかけてくれた。




「これも何かの運命かのう、、優や、安心しなさい。 それに、これから、君の黄金の騎士団への加盟を祝って、宴じゃ。少し横になって、休むと良い。」




長老はそう言い、そして、ルリシビさんは、俺の髪の毛を、ソッと撫でながら、どこか、胸苦しそうに、「優君、生きて生きて生き抜くんだ。熱も少しあるな。」




ルリシビさんが、アイヌに伝わる薬を飲ませてくれると、身体が少し楽になり、俺はそのまま深い眠りに落ちた。






「オーイ!新入り、起きろってば! オイラ、腹減ってたまらねぇや! さぁ、お前の歓迎会だ!早く早く!」




「コラ、アドニス、そんなに急かすんじゃない。」




「ア、アランさん、、」




すっかり、身体の疲れも取れた様で、時計を見ると、夜8時近くになっていた。




「ステーキに、ピラフに、あ!ハンバーガーやグラタンも良いな〜!」




アドニスは、食べる事が大好きらしく、瞳をキラキラさせ、鼻唄を歌っていた。




「さぁ、着いたぞ、宴会場だ!」




アランさんに導かれ、俺はゆっくりと大ホールの様な部屋に入った。





アジア、欧米、アフリカ、様々な人達が、食卓を囲んで座っていた。




「国は違えど、皆、大切な黄金の騎士団の仲間達だ。優、アドニス、こっちの席にしよう!」




アランさんは様々な人達から、慕われている様で、とても、人格者の様だ。




「皆、今日は我等が黄金の騎士団に入った、新たな仲間、優の歓迎会じゃ! 大いに楽しもう!」




長老が、そう言うと、皆が飲み物を片手に持ち、乾杯!と歓迎してくれた。




「Hey, bro! 食べてるか?ワハハハ!」




アランさんと、そっくりだが、更に一回り、身体の大きな男性が、ビールを片手に話し掛けてきた。




「えっと、確か名前は、、」




「アレン、飲み過ぎだ。優、こいつは、俺の双子の弟アレンだ。根は良い奴だが、飲んべえでな、、ハハハ!」





「You are Japanese right??」




色んな国籍の人達がいて、皆、歓迎してくれた。





「カタナは、ドノ色に変わった?」




片言混じりに、モンゴル出身の相撲取りの様に大きな男が話し掛けてきた。




「黒刀に、紫の模様が現れたよ。。」




と、俺が答えると、相手はギョッとした様子で、また、周りに居た騎士団達も、何故か怯えた様に見えた。




「え? えと、あの何か、、」




呆気に取られていると、「オーイ! 優ー! どうした、浮かねぇ顔して! やっぱり、Japanの飯っつったら、これだよな!」




アドニスは、何があったのかなんて、気にもしない様に、100貫は入った桶寿司と、天ぷらを持ってきてくれた。




「さぁ!食おうぜ!」




「ほら、優君、君の国の料理、すき焼きもあるぞ!」




アランさんも、ニコニコとして、俺の背中を、優しく、ポンポンと叩いてくれた。




アレンさんも、ビールを片手に皆で、食べて飲んだ。




一人っ子の俺には、まるで本当の兄弟達が出来たかの様な、温かい時間だったのを、今でも覚えている。




そして、俺達が、皆、腹一杯になった頃、長老が、祭壇に立ち、皆に話を聞く様にと伝えた。




「優、皆、今日は楽しめたかの? 優や、騎士団として、共に頑張ろう! そして、もう一つ、皆に伝えなければいけない事がある。岩瀬が逝った。だが、皆、悲しんでばかりではいけない、彼女は最後まで奮闘し、敵の一人を倒したのじゃ。だが、もう、これ以上、涙を流す事のない様に、今こそ、宿敵、髑髏の騎士達、そして、その頭領、鬼神を打つ時じゃ!!」




長老が鼓舞する様に話すと、皆が涙目で岩瀬の冥福を願った。




「あの二つ星ハンターの岩瀬が、、」




皆は動揺を隠せない様だった。




「その鬼神ってボスは、そんなに強いんですか?」




俺は隣に居たアレンさんに訪ねた。




「そうだな、長老も含め、ここにいる77人の黄金の騎士団全員でも勝てるか、どうかだな。。あ、でもな、前に獅子の一族と言う最強の民族の末裔の男が、病に身体を犯された状態にも関わらず、ギリギリまで鬼神を追い詰める事が出来たんだ、今でも思うよ、、彼が万全の状態だったならと、、」




「アレン! 話し過ぎだ。さぁ、優、残りの寿司も食べよう!明日から初稽古だ、ウンと食べなさい。」




「あ、ワリ、ワリ、優、オイラ、トロ全部食べちゃったぜ、ハハハ!」




アランさんは、全くと、呆れ顔をしていたが、彼の醤油皿に、ワサビをつけてあげた。




その晩は本当に楽しかった。




「あ、ちなみに、今日から、オイラ達、同部屋だってよ! 宜しくな、優!」




そう話すアドニスの無垢な青い瞳は本当に綺麗だった。



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作品コメント

4件


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R太郎

2023年10月30日

y.kato さん、いつも、読んで下さり、しかも、コメントまで、、、本当に嬉しいです! 本当にありがとうございます(*^^*) フフフ、何を隠そう、、私もとある駄菓子屋にて、、、フフフ! 次も速攻で載せるので是非是非、ご覧下されば、とっても嬉しいです(^^) R太郎(*^^*)



y.kato-channel

2023年10月30日

本当によく書けてる話ですよね! 好奇心を刺激する、 面白い作品だと思います! というか、 また読みに来ました! あなたもトラベラー? 岩瀬美里も?


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