漫才9「熱中症」

幌井 洲野

漫才「熱中症」

<これは漫才台本です>

セリフの掛け合いをお楽しみください。


【熱中症】


二人 「どうも~ アヤミとアズサでアヤアズです~ よろしくお願いします~」

アズサ「アヤミ、あんた、アヤミか?」

アヤミ「もう、それやめや言うとんのに。いえ、ウチはアヤミやのうて、イヤミや」

アズサ「とうとう白状したか」

アヤミ「あー、つまらんボケ言わんかったらよかった」

アズサ「だいじょぶや。ウチもホンマはアズサやのうて、アズキやから。回転焼きの甘ぁーいアンコになる、畑のルビー、アズキ、な」

アヤミ「嫌なやつイヤミと畑のルビーアズキか。はじめっから勝負付けに来とるやんか」

アズサ「まあええやん。イヤミちゃん、いや、アヤミちゃん」

アヤミ「ま、えっか。漫才始めよ」

アズサ「うん、そうしよ」

アヤミ「な、最近めっちゃ暑いやんな。熱中症、ほんま気ぃ付けなあかんな」

アズサ「あー、熱中しょうな。ほんま、気を付けなあかんな。熱中しょうにならんと、ええ人生送れんからな」

アヤミ「なんや、また、意味ずらしてきたな」

アズサ「え、そんなことあらへんて。熱中しょうやろ?」

アヤミ「うん。まず、夏とかの暑いときに起こるやつやな」

アズサ「そうやな。夏とか、バテてしもうて熱くならんと、怒られるな」

アヤミ「暑くならんと、やなくて、暑くなると怒られるんやろ?」

アズサ「ちゃうよ、夏やからて、涼しい顔して熱くならんと、怒られる」

アヤミ「うーん、確かに熱中症になってしまって、なんできちんと対応しとかんのや、て怒られることもあるけど、普通はまず手当てからやで」

アズサ「熱中しょうになると、なんや手当てしてくれるん?」

アヤミ「うーん、なんやアズサ、ズレとる気ぃがするけど、このまま続けたるな」

アズサ「おおきに。やっぱり、人間、何をするにも熱中しょうにならんと、ええ成果にはならんで」

アヤミ「え、熱中症になったら、ええ盛夏もなんもないやろ。命にかかわるんやで」

アズサ「命にかかわるて、やっぱり、熱中しょうは人間の基本。それやと、やっぱり命にかかわるかもしれんな」

アヤミ「な、アズサの熱中症て、どんなイメージ?」

アズサ「うーん、まずな、ちょっと熱さみたいの感じる」

アヤミ「確かにな。ほんで次は?」

アズサ「なんや、心臓がドキドキして、心ワクワク」

アヤミ「熱中症でワクワクする人なんかいいひんで」

アズサ「え、アヤミ、ワクワクしいひんの? やっぱアヤミ、冷静いうか、あー、やっぱイヤミか」

アヤミ「イヤミぃは、さらっと流したるな」

アズサ「おおきに」

アヤミ「熱中症で冷静いうたら、冷静に手当てせんとまずいやんか。首筋や脇の下とか冷やすとええんやて」

アズサ「え? 熱中しょうしとるときに、そんなとこ冷やしたら、ワクワクドキドキが冷めてしまうやんか」

アヤミ「冷まさんとあかんやんか、絶対」

アズサ「え、ほなら、アヤミ、今まで熱中しょうしたことないの?」

アヤミ「うん、ないよ。おかげさまで、いつも水分とっとるし、やたら暑いところとか行かへんし」

アズサ「やっぱクールいうか、イヤミ全開やな」

アヤミ「アズサ、ケンカ売っとるんか?」

アズサ「ケンカちゃうよ。ウチはアヤミに、もっと漫才熱中しょう、言うとるだけ。熱中、し・よ・う!」

アヤミ「あ、熱中しょうて、漫才にもっと気合入れて熱中しよう、いう意味?」

アズサ「あたりまえやんか! 漫才も小説も編集も、熱中しいひんとええもんは生まれへんで」

アヤミ「おおきにアズサ。て、あんた、ウチが熱中症て言っとるの、はじめから分かっとって、わざと熱中しよう、言うてたんちゃうか?」

アズサ「いや、アヤミセンセがもっと熱中してくれたら、漫才も小説も、ウチの編集も、もっとうまく行くんちゃうかなー、て思うて」

アヤミ「あんた、それ、思い切りイヤミやんか!」

アズサ「はい、ウチは、アヤミセンセにハッパかけて、ピカピカのルビーのようなアズキに磨き上げる、敏腕編集者のアズサです」

アヤミ「アズサ、ウチやなくてあんたが一番イヤミやん」

アズサ「かんにん、後で回転焼き買うてくるから許して」

アヤミ「なんでも回転焼きか。て、ウチも好きやからええけどな」

アズサ「ピカピカのルビーのようなアズキのアンコの入った回転焼き食べて、小説と盛夏を乗り切ろう!」

アヤミ「またそこか。ええかげんにせえ」

アズサ「皆さんも熱中症気ぃ付けて熱中してやー」

二人 「どうも失礼しましたー」

(了)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

漫才9「熱中症」 幌井 洲野 @horoi_suno

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る