“音”の描写が見事な一章。冒頭のバスのブレーキ音から始まり、足音・息遣い・会話までもが「交響曲」として響き合う構成が美しいです。竜斗の無表情な「どうでもいい」が、彼の過去や孤独をにじませ、静かな余韻を残します。キャラの掛け合いも自然で、笑いと緊張が絶妙に同居。何気ない「坂道」がそれぞれの関係性を映す舞台になっているのが印象的でした。
自身のことを「背景」と呼び、心を閉ざした虚ろな表情の男子高校生と、クラスで人気者の明るく活発な女子との心の交流を描いた物語。細やかな情景描写と心理描写が、まるで純文学を思わせるほど丁寧な筆致で綴られており、読み手を強く引き込みます。今はまだ自ら表舞台に立てない彼と、そんな彼をモブ以上の存在として認識し始めた彼女。二人の関係がどのように変化していくのか、これから先の展開にも注目です。