第2話 構造上の問題
わたしはカクヨムに来る前、小説家になろうにいた。
そこでエッセイをよく読んでいて思ったことなのだが……。
なにかを批判するとき、しっかりと数字を出して理路整然と書かれた作品より、根拠を示さず強い言葉で書きなぐる作品の方がポイントを多く稼ぐのだ。
なろうテンプレに対する批判なんかがまさにそうで、クソだ、気持ち悪いと感情のまま書き連ねるとたくさんのポイントが入る。
なぜだろうか?
どう考えても根拠や理論、数字を出した作品の方がクオリティーが高く、
感情論むき出しの悪口の方がクオリティーが低いはずだ。
だが、クオリティーが低い後者のほうが圧倒的にポイントを得られる。
原因はWEB小説の構造にある。
多くの人は作品にポイントを入れない。読んだらそのまま去っていく。
ポイントを入れるのはその作品に強い共感を抱いたとき、あるいは強い不快感を抱いたときだ。
人間とは不思議なもので、不快なときこそ自身の気持ちをアピールしたくなる。
コイツむかつく! 低評価をつけてやれ! ってなもんだろう。
だが、カクヨムのポイントは加算式。どれだけ低いポイントを入れようが、プラスに働く。
最低の評価はポイントを入れないことなのだが、不満を抱いた層は自身の気持ちを主張したいがために、嫌いな作品にポイントを入れてしまうわけだ。
ただのアシスト。草である。
結果、低クオリティー作品はポイントが増え、さらに読む人も増えていくといったスパイラルが生まれる。
この構造、なにかに似ていないだろうか?
そう、テンプレ作品である。
たとえ多くの人に反発されようと、特定の層から強い支持を
テンプレ作品に向けられる強い否定の言葉。それこそがむしろ作品を押し上げる原動力となる。
もちろん、質は違う。
何かに向けた批評や批判と、読者が楽しむために書かれた作品。方向性はまったく違うだろう。
だが、特定の層から強い支持を得、その他から強い不快感を得たほうがポイントを稼げるといった構図は同じだ。
だからこそ、読者の願望や欲求を満たしてやる作品が評価されるのである。
テンプレを批判している人の大半はこれを理解していない。
立ち位置が違うだけで、メカニズムは似たようなものなのだ。
〇テンプレ批判で的外れだなと思うこと
テンプレ批判作品でたまに見る論調。
テンプレ作品はオナニーである。
間違いである。
もちろん、趣旨は分かる。
欲求や快楽、自己肯定感や承認欲求。それらをインスタントに摂取する姿。いわばお人形遊びのような世界観をそう表現しているのだろう。
だが、WEBの世界はテンプレが主流となっている。
それ以外を提供することは、むしろ読み手のことを考えていない自己満足になる。(※で補足)
言葉の趣旨にそうと、それこそオナニーだ。
そもそも、WEBにおける執筆とは、自己の妄想を垂れ流すこと。
自家発電を批判の言葉につかってしまうと整合性が取れなくなってしまうのである。
※カクヨムもなろうも小説を書く場所であって、テンプレを募集している場所ではない。実際には読み手のことを考えていない自己満足にはならないのだが、間違った理論の上ではそうなってしまう。そもそも、何を書くべきか制限すること自体間違っている。
〇つまるところ生理的な問題
先日とあるエッセイを読んだ。
小説家になろうにアップされていた作品だ。
テンプレのなにが問題か、理論的に細かく説明されていた。
内容はまあどうでもいい。わたしはテンプレそのものを批判する立場ではない。
わたしが注目したのはふたつ。
まずは投稿日時。
2013年だった。
いまから12年前である。この時点でテンプレ批判はすでに仕上がっていたのである。
その完成度の高さ、そして、テンプレの変化のなさにちょっと笑ってしまった。
書かれた批判のすべてが今でも当てはまる。ざまあだの配信だの甘やかしだの、物語の形は変わっても本質はまったく変わっていないのである。
そして、注目したもうひとつ。
これが今回最も話したかった内容である。
そのエッセイでは、テンプレを批判する人、擁護する人、対立するのは好みの違いだと述べていた。
互いに「自分の好みじゃないものは認めない」からだと。(あくまで激しい論調の人とことわったうえでだが)
これにはちょっと違和感があった。もちろん間違ってはいないが、本質はもっと別にあると思っていたからだ。
が、つぎで納得した。
『一方はグラビアアイドルのよさを語り、もう一方は幼女のよさを語っている』
これだと思った。
メカニズムがどうこうではない。
生理的な嫌悪感。テンプレを一番正確に表しているのはたぶんこれである。
テンプレ作品はなぜキモいか ウツロ @jantar
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