第9話 モニカとありがとう

 モニカの午後はティータイム。

 お作法マナーの勉強とは表向き。

 姉のリジェルやメイドたちと楽しいひと時。

 

 その間、ケルスはお休み中。

 の、はずですが?


 戸が開く気配に、ケルスが顔を上げる。


「ケルス、ケルスゥ」


「なんや?」


におやつたべまちょう!」


「今日はティーパーティーせえへんのかいな?」


「ねえたま、きゅうなでつ!」


「いそがしそうやな、姉ちゃん」


「あい! だから、きょうはケルスとおやつでつ!」


「ま、ええか」


(いただきます)


(ごちそうさま)


 頃合いを見てメイドさんが入り、片付けていきました。

 戸が閉まればまた、モニカとケルスのふたりきり。


 モニカ、何やらそそくさ。


「お昼寝せえへんのかいな?」


「モニカもいそがちいのでつ! なのでつ!」


「なんや? また大人の真似事かいな」


「ち・が・い・ま・つ! モニカもだいじなでいそがちいのでちっ!」


「はいはい」


 んしょと、机へ。


「めずらしいな、自習かいな」


「おてがみ、かくのでつ!」


「ふぅん、誰に? 姉ちゃんか? 兄ちゃんか?」


「コックたんでつ!」


「へえ」


 便箋びんせんに向かい、一生懸命なモニカ。


「いつもぉ、おいちいおやつをぉ、ありがとうございまつぅ」


「えらいなあ。お嬢からこんな手紙もろたら、見習いまでみんな感激しよるわ」


「そうでつか!」


「つまりそれ、王女さま直筆じきひつの感謝状やさかい」


「むふん! けど、おひめたまはかんけーないのでつ」


「ん?」


「かあたま、いってまちた」


「そういや、このまえ母ちゃんに会いにいったんやったな?」


「あい! おひさしぶりでちた!」


「よかったな。オカン、療養で田舎の実家帰っとって滅多に会えんもんな」


「そうなのでつ! でも、きょうはなのって、ちょっとおきてモニカをぎゅってしてくれまちた!」


「ほうか、ほうか」


 ケルスも感慨深そう。


「ねえたまも! うれちそうでちた!」


「ハハハ! さすがの姉ちゃんも、オカンには甘えるか」


「ねえたま、てれてまちた! もう、こどもじゃないのにって」


「ま、親からしたらいくつになっても子どもは子どもやさかい」


「かあたまも! おなじこといってまちた」


「そやそや。甘えられるうちに甘えといたらええわ、お嬢も、姉ちゃんも」


「あい!」


「で?」


「あい?」


 こてんと、野菊のようにかわいく首をかしげるモニカ。


「オカンになんかゆわれたんとちゃうん?」


「なにがでつか?」


「お嬢がいうたんやん!」


「そうでちた! かあたま、いってまちた! かあたまがげんきになれるのもみんなのおかげよって。だから、モニカもありがとうをわすれてはダメよって」


「なるほどなあ。そんで手紙か」


「あい!」


「お嬢はほんま、人に恵まれとるわ」


「そうでつか? ありがとうはとーぜんなのでつ!!」


「それを素直に行動に移せるんがお嬢のええとこやな」


「……できたでつ!」


 椅子から立ち上がるモニカ。


「いくのでつ!」


「どこへ?」


「おてがみ! ちゃんとわたしてこそなのでつ!」


「ああ、そやな」


「ケルスもにいくのでつ!」


「はいはい」

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