恋というかなんというか

Sna9

第1話、BAR【バイオレット】

夏の暑さも少し和らぎ出した頃、僕らは出会った。

いつも通り仕事を終え、帰路につく。見慣れた帰り道を1人寂しく歩いていると曲がり角を曲がった途端いつもと違う風景が目の前に飛び込んできた。俗にいうナンパだ。


「やめてください!」

「いいじゃん!ちょっとだけ!ね?」

男の方が女の子の腕を掴んだ。

この疲れ果てた体で家の目の前まで来たのに、こんな事で休む時間を削られたくない。休みたい!

「あの、」

「あ?んだよ」

「...邪魔!」

昔から目つきが悪いと言われてきたからか疲れもあいまり少しイラつきを帯びた声はおもったよりも効果絶大だった。


男は手を離し俺を睨みつけながら走りさっていった。

「はぁ...んじゃ、気をつけて」

女の子に軽く頭を下げ、その場を立ち去ろうとしたが、急に女の子に手を捕まれた。

「あの!ありがとうございました!

よ、良かったら近くに私の働いてるBARがあるんでお礼させてください!」


(...帰りたい)


しかし手をがっちり握られ、こちらを見つめてくる。断れる雰囲気ではない....仕方ない。

「じゃあ、お言葉に甘えて、少しだけなら。」

「なら、さっそく行きましょ!」


そういわれ手を引かれ歩いていく。

「あ!そういえばお名前なんて言うんですか?

私は速水 心です!さっきはありがとうございました!あ、お店ここです!さ、入って入って。」

(せわしない子だな。)


BAR【バイオレット】、という看板を潜ると、彼女の顔を見るなり店長らしき人が飛んできて遅刻だと怒られていたが間に入って事情を説明し、彼女と店長からお礼に1杯だけサービスしてもらった。

(いい雰囲気の店だ。)

そして、帰り際。

「あ!そうだ!名前は?」

「あぁ..えと、佐倉です...佐倉文です。」

「じゃあ、また来てね!これからよろしくね佐倉さん!」

これがBARバイオレットと、彼女、速水心との最初の出会いだった。





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