漫才8「怪談」

幌井 洲野

漫才「怪談」

<これは漫才台本です>

セリフの掛け合いをお楽しみください。


【怪談】


アズサ「どうも~ アヤミとアズサでアヤアズです~ よろしくお願いします~ ん? アヤミどうした? 挨拶しいひんの?」

アヤミ「あ、え、ごめん。なんやボーっとしとった」

アズサ「なんや、暑さにやられたんか? あ、でも、アヤミ、顔、真っ白やで。貧血か?」

アヤミ「いや、そうでもないんやけど。・・・漫才、やろ?」

アズサ「うん、ほなら、漫才、やろな。アヤミ、あんた、アヤミか?」

アヤミ「・・・」

アズサ「どうした? やっぱり元気ないな」

アヤミ「いや、うん、ウチ、アヤミやよ。問題あらへん」

アズサ「そか。な、アヤミ、カイダン好きか?」

アヤミ「カイダン? いや、ウチ、エスカレーターかエレベーターがええ。もう人生疲れてきた」

アズサ「いや、そのカイダンちゃうくて、ほら、お話しのカイダンや」

アヤミ「あ、大統領とか総理大臣がやるやつ。首脳会談とか。ウチ、縁遠いわ。そんな偉ないし、もう一生偉くなれそうもないし」

アズサ「うーん、なんや、悲観的やな。そうやなくて、ほら、夏によくやる、聞くとぞわってする話」

アヤミ「あ、その怪談か。うん、ウチ、工学部出たせいか、あんま、怖い話、ピンと来いひんけどな」

アズサ「ま、アヤミならそうかもしれんな。なんや、怪談によくあるパターンあるやろ?」

アヤミ「うーん、なんやろ、いないはずの人がおるとか?」

アズサ「あ、それそれ、ホンマは五人しかおれへんはずなのに、数えたら六人おった、とか、そういうやつ」

アヤミ「うーん、なんや数え間違いちゃうんかな」

アズサ「なんや、今日のアヤミは、全然ツッコミも弱いし、悲観的やし、なんややっぱり元気ないな」

アヤミ「そんなことないて。アズサが単に心配しているだけや」

アズサ「ほなら、もう少し怪談の話ふくらませてな」

アヤミ「うーん、ほなら、いるはずの人がおれへんとか?」

アズサ「それ、アヤミやんか。学生のころから遅刻魔やて、まえ自分で言うてたやんか」

アヤミ「そやったかな。うん、たしかにウチ、夜寝るときに、あ、今日約束あったとか思い出して、しゃあないから、翌日同じ時刻に待ち合わせ場所行ったことある」

アズサ「それ、遅刻やなくてチニチやな」

アヤミ「ああ、時刻やなくて日にちに遅れるから、遅日か。そやな・・・」

アズサ「うーん、なんや、今日は調子出えへんな。ホンマ、アヤミだいじょうぶか?」

アヤミ「だいじょうぶやよ。問題あらへん。だいじょぶやて」

二人 「・・・」

アズサ「な、今日はこのぐらいにしとこか」

アヤミ「うん、かんにん。あ、ウチ、ちょっとホンマに気分悪るなった。もう上がらせて」

アズサ「え、アヤミ、ちょっと待ち。まだオチ言うてへんて」

アヤミ「さいなら~」

アズサ「え? 行ってしもた。なんや?どうした?」

(すぐに反対側の袖から、アヤミが出てくる)

アヤミ「アズサ、スマン、かんにん。ウチ、ホンマに遅刻してしもうた! もう始まる時間過ぎとるよな? ホンマかんにん!」

アズサ「え? なに? アヤミ、今までウチと漫才やっとったやんか。どうした?」

アヤミ「え、なに? ウチ、ホンマ、今日起きるの遅うなって、今来たとこ」

アズサ「え、それじゃ、さっきまでのアヤミは・・・?」

アヤミ「え、なにそれ?」

二人 「・・・」

(了)


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漫才8「怪談」 幌井 洲野 @horoi_suno

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