第三章・無職独身女 ~欲望のまま迷宮で暴れたら再生数が爆発した~(ついでに迷宮も爆発した) 12
しかし、これも自分のチャンネルで大きく知名度を上げる為!
――そう。
自分のアカウントのチャンネルぐらい、私が主人公で良いじゃないかぁぁぁっ!
心の中で無駄に絶叫した日葵は、近くにある大きな幹の大木を屹然と睨みつける。
ちょっと前にも言ったが、モンスターと普通の木の違いを肌で感じ取る事が出来るようになっていたのだ。
……どう言う理屈で分かるのかは、未だ本人にも謎なのだが。
しかしながら、相手がモンスターだと分かる部分は大きなアドバンテージでもある。
「さぁ、シズ1000。しっかり撮りなさい? 美少女魔法使い山形日葵ちゃんが、視聴者のみんなをアッと言わせる凄い魔法をどどぉぉぉんとかましてやるんだから!」
「う~!」
両手を天高く掲げ、自分なりに恰好良いと思い込んでいるポーズを作りながら叫ぶ日葵が居た所で、シズ1000が不平そうな声音を出して来た。
程なくして、アリンがシズ1000の言った事を翻訳しようと口を動かすが、その口は日葵の手によって覆われた。
「大丈夫、言わなくても良いから」
日葵は、にこやかに微笑み――やんわりと声を発した。
分かってる……分かっているのだ。
シズ1000がすっごく癪に障る台詞を言っているのは!
「ヨシ! ここが正念場!」
実は、正念場でもなんでもなかったけど、日葵は大魔王を相手にしているかのような、歴戦の戦士みたいな面構えをみせて叫んでいた。
きっと演出でそんな事をほざいてくれちゃってるんだろうけど、少し無理があり過ぎた。
果たして、日葵は魔導式を紡いで行く。
G井 = 重力井戸形成(Gravitational Well Formation)
慣遮 = 慣性遮断(Inertial Severance)
圧折 = 圧力折りたたみ(Pressure Folding)
剪衝 = 剪断衝撃波(Shear Shockwave)
反フ = 反発フレア(Repulsion Flare)
ΔΦ = 魔力曲率変化(Mana Curvature Shift)
G井+慣遮+圧折+剪衝+反フ+触媒(隕鉄, 黒曜, 古祀土)
→ΔΦ重力崩壊魔法
「……ん? 待て? なんだそれは?」
魔導式が『ゆっくり流れて』来た所で、アリンは気付いた。
日葵が敢えてゆっくり魔導式を紡いでいるのは、視聴者に分かり易くする為だろう。
このやり方はアリンも前の動画でやっていたので、真似をしていたとしてもおかしな事ではない。
問題は、その中身だ。
見た事も聞いた事もない魔導式だった。
正直、魔導式が高度過ぎて、この時点でなんの魔法なのかは分からないが……重力に関係する魔法だと言う事だけは分かった。
「ど、どうして爆破魔法の魔導式に、重力の魔法が――っ!」
焦るアリンが居る中、日葵の魔導式が途中で変わった。
つまり、わざわざ遅くやっているから分かり難いが、本来ならこれは魔導式の中に組み込まれた『ひとつのパーツ』に過ぎない。
「……はぁ? あの大魔導、バカなの? いやバカだろ!」
たかが動画の収録の為に、なんて魔法使おうとしてんだぁっ⁉
胸中で大絶叫するアリンが居る中、日葵の魔導式が続いた。
帯電雲形成(C雲) = Charged Cloud Formation
電位差拡張(ΔV拡) = Voltage Gradient Expansion
放電誘導(誘放) = Discharge Induction
雷核制御(雷核) = Lightning Core Stabilization
衝撃波展開(衝展) = Shockwave Deployment
ΔVₘₐₙₐ = 魔力電位差(Mana Voltage Shift)
帯電雲形成+電位差拡張+放電誘導+雷核制御+衝撃波展開
→Δ𝑉mana雷嵐魔法
「こ、今度は雷の……古代魔法なの…か?」
アリンは愕然となりながらも、日葵を見据える。
もう、なにがなんだか分からない!
そうこうしている内に、日葵の魔力がとんでもない勢いで膨れ上がっているのが分かった。
「ち、ちょっと待て! ストップだ大魔導! お前、マジで気合い入れすぎだ!」
叫ぶアリンが居る中――しかし、彼女の声が日葵まで届く事はなく、尚も魔導式が展開されて行く。
地殻軟化(軟殻) = Crust Softening
熱圧蓄積(熱蓄) = Thermal Pressure Accumulation
マグマ誘導(誘溶) = Magma Channeling
噴出口形成(噴口) = Vent Formation
爆裂展開(爆展) = Eruption Deployment
ΔTₘₐₙₐ = 魔力温度差(Mana Thermal Shift)
地殻軟化+熱圧蓄積+マグマ誘導+噴出口形成+爆裂展開
→Δ𝑇mana火山爆発魔法
――ドンッッッッ!
日葵の周囲に紅蓮のオーラが生まれ、とてつもない炎の渦が生まれる。
ボコォ……ボコボコォォォ!
紅蓮のオーラは、凶悪過ぎる程に圧縮された魔力の渦により、周囲の地面を削り取り――
ボコォォォォンッ!
巨大なクレーターを作り出す!
「ひぃぃやぁぁぁっ!」
とうとうアリンは悲鳴を上げた。
ここに来て、ようやく気付いた。
自分達の世界では伝説級の存在と謳われた大魔導とか言う存在は、もはや人智では成し得る事の出来ない……まさに想像を絶する――
「大馬鹿野郎だぁぁぁっ!」
アリンは錯乱状態になりながら叫んだ。
そこから全力で魔導防壁を展開する。
この程度の防壁がどの程度まで役に立つのか?
正直、紙装甲も甚だしいが、やらないよりはマシ。
そんな事をアリンが考えている中、尚も魔導式が続いて行く。
「まだあんのかよぉぉぉっ⁉」
水分凝集(凝水) = Moisture Aggregation
温度急降下(急冷) = Rapid Temperature Drop
氷刃形成(氷刃) = Ice Blade Formation
吹雪展開(吹展) = Blizzard Deployment
凍結波伝播(凍波) = Freeze Wave Propagation
ΔT₍𝚌𝚛𝚢𝚘₎ = 魔力冷却差(Cryo Mana Shift)
水分凝集+温度急降下+氷刃形成+吹雪展開+凍結波伝播
→Δ𝑇cryo氷結嵐魔法
G井 = 重力井戸形成(Gravitational Well Formation)
慣遮 = 慣性遮断(Inertial Severance)
圧折 = 圧力折りたたみ(Pressure Folding)
剪衝 = 剪断衝撃波(Shear Shockwave)
反フ = 反発フレア(Repulsion Flare)
ΔΦ = 魔力曲率変化(Mana Curvature Shift)
G井+慣遮+圧折+剪衝+反フ+触媒(隕鉄, 黒曜, 古祀土)
→ΔΦ空間断裂魔法
以下、魔法の複合と融合による、混合五種魔導式。
(3⋅ΔΦgrav+2⋅Δ𝑉mana+2⋅Δ𝑇mana+Δ𝑇cryo+ΔΦrift)
Mana Matrix Convergence
→Cataclysm Bomb
(重力崩壊魔法×3+雷嵐魔法×2+火山爆発魔法×2)
氷結嵐魔法+空間断裂魔法
=天地爆砕魔法――カタクリズム・ボム!
「う~~~~~!」
全ての魔導式が発動した直後、シズ1000がアリンの前に現れ、そして空間転移魔法を発動させた。
日葵の超魔法が発動したのは、この一秒後だった。
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