2-6 町の復興に向けて
海賊達との長い戦いの夜が明けた–––––。
ハコンダテの町は勝利に浸る余裕など無かった。町を守り抜きこそすれ、ハコンダテの人々からすれば全く得るものは無く…ただ失っただけで、
それでも生き残った人々は、死者を弔い焼け落ちた家や街並みを復興すべく皆で手を取り合い––––前を向いて進もうとしている。
そんな中、マリウスはフォーダに呼ばれ領主の元に訪れていた。その際、是非一緒に連れて来て欲しいと言われたリンもマリウスに付き添って来ていた。
「おお、マリウス殿!
領主の執務室について早々、フォーダの父はマリウスに向かって大きく頭を下げた。
「僕だけの力ではありません。皆が力を合わせて乗り切ったのです」
「ふふふ、謙虚な男だな。それから…リン殿。フォーダから聞いたが、海賊首領・ガザメスの潜伏先を見事突き止めてくれたそうだな?その上、儂の命も救ってもらった…お主にも本当に感謝している」
フォーダの父はリンに対しても心からの感謝の言葉を述べ、深く頭を下げた。この領主の振る舞いにマリウスは感心していた。
(ともすれば平民に対して横柄な態度しか取らない愚か者もいるが、このお方は違う。人の上に立つべき素晴らしい方だ)
元の世界では王族として、多くの地方領主とも話す機会があったマリウスから見てもフォーダの父は優れた領主だと思えた。
「私は…ただマリウス様の命に従っただけです」
「ぬぅ、主君の振る舞いに家臣も似るものだな…?」
「はは…そうかもしれませんね。ところで、お呼びした用件はこれだけではないのでしょう?」
フォーダの父は少し驚いた様子を見せるも、呼び出した本題について話し出した。
「ああ、マリウス殿の言う通りだ。実は予想以上に町の被害が大きく、メイン・アイランドまでの船を出す準備がどうしても遅れてしまいそうなのだ…」
「それは仕方ないですよ。出航の準備が出来るまでどれくらいかかりそうですか?」
「うむ…
「分かりました。それまでの間、ハコンダテに滞在させていただきます。それと及ばずながら復興のお手伝いや、海賊達の残党退治を手伝いたいと思います」
マリウスはリンの方をチラリと見やると、彼女は小さく頷いた。
「そう言って貰えると本当に助かる…。どうだ、マリウス殿?このままハコンダテに残り、フォーダを妻に
「……ありがたい申し出ですが、やはり故国に戻るための
「そうか…決意は固いようだな。町に居る間はアベイル・カイの両名を好きに使ってもらって構わん。それとフォーダともなるべく一緒に過ごしてやってくれんか…?」
「–––––分かりました」
フォーダの父との話が終わり、城から出た二人は一息つきながら今後の話をする。
「リン、これからの事なんだけど–––––」
「私はマリウス様付いて行きます」
マリウスが言い終わる前に意思表示を示すリン。マリウスはガシガシと頭を掻きながら、もう一度リンに意思を問うた。
「いいかい、リン。僕は船の出航準備が終わったら、自分の元居た国に戻るためにメイン・アイランドに渡るんだ。その上、僕の祖国はこのジャプンからどれだけ離れているかすらも分からない状況だ…それでも付いて来るって言うのかい?」
「私は元々メイン・アイランドで生まれ育ちましたので、それなりに案内も可能です。それに一度マリウス様を主と定めたのですから、どこへでも付いて行きます」
「だ、だから…!リンみたいに可愛い子が僕と二人で旅するなんて、色々と良くないんだよ…」
マリウスの言葉を聞いて、リンは不思議そうな顔を浮かべていたが–––––何かに思い至ったのかポンと手を叩く。
「私でよろしければ夜のお相手も務めます–––––」
あっけらかんと言い放ったリンを見て、本当に意味が分かって言ってるんだろうか?と頭を抱えるマリウス。
(…その辺は僕が我慢すればいいだけの事か)
「仕方ない…君を連れて行くよ。正直、リンが居てくれたら本当に助かるし––––改めてよろしくね」
「はい。誠心誠意お仕え致します!」
旅立ちはまだ少し先の話ではあるが、マリウスにとっての旅の道連れが一人出来たのであった––––––。
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[あとがき]
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!第二章は次が最終話予定です。その後、章末のキャラクター紹介を入れてから第三章に入る予定ですが、もしかしたら一話分間章を入れるかもしれません(2-7の話次第ですが)。
もし物語が面白かった・続きが気になるという方は♡や⭐︎と作品・作者のフォロー、また感想をいただけるとありがたいです( *・ω・)*_ _))
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