2-4 ハコンダテを救え!【前編】(戦闘MAP-②)

 マリウス達は商館の外に出て、戦闘の準備をしていた。主には装備の確認と作戦の最終確認である。


 フォーダ・アベイル・カイの三人は休ませていた馬に乗り、槍を装備した。マリウスはレイピアと袖の雪を腰に差し、どちらの武器もすぐに抜けるようにしていた。


 マリウスの元に三人が集まり、もう一度作戦と配置について復唱する。


[戦闘MAP-② ハコンダテの町を救え!]╔═════════════════╗


 首⃞ボス▮▮▮▮▮▮▮▮▮▮ 海⃝ ▮▮▮▮▮▮▮▮▮▮マ⃝


 海⃝ ▮▮▮▮▮▮▮▮▮▮ 海⃝ ▮▮▮▮▮▮▮▮▮▮カ⃝


 海⃝ ▮▮▮▮▮▮▮▮▮▮ 海⃝ ▮▮▮▮▮▮▮▮▮▮フ⃝


 海⃝ ▮▮▮▮▮▮▮▮▮▮ 海⃝ ▮▮▮▮▮▮▮▮▮▮ア⃝


╚═════════════════╝

※マ⃝:マリウス、カ⃝:カイ、フ⃝:フォーダ、ア⃝:アベイル、首⃞:海賊首領、海⃝:敵海賊、▮:壁


「それぞれ壁に隠れた後、カイから順番にわざと敵に見つかるようにするんだ。君たちが海賊を引きつけている間に、僕は奥の首領の所まで一気に辿り着く」

「俺たちは一つ右側の通路(MAPで言うと一つ上)に出て、海賊に見つかればいいんだな?」

「そうです。海賊をしっかりと引き寄せないとマリウス様の元に敵が行ってしまいますから気を付けないといけませんね…」

「それにしても奴らはこんな死角になる場所を見つけて隠れていたな?忍が調べてくれていなかったら、恐らく見つけられなかったぞ…」

「確かに…だけど隠れ場所が分かってしまえば、この地形は追い込まれると袋の鼠だ。勿論、僕たちが海賊達や首領を仕留められるかにかかってくるけどね」


 自分たちが狩る側でないとならない…とマリウスが口にすると、アベイルとカイは「任せろ」とばかりに自身の胸をドンと叩く。


 フォーダは少し不安そうな表情をしていたが、両頬をパンッ!と叩き自らの気持ちを奮い立たせた。


「海賊を倒し町を救う事が目的だけど…君たちが死んでしまっては意味が無い。必ず生き残るんだ!」


「「おおっ!!」」

『はい!マリウス様もお気を付けて…」


 マリウスが三人に檄を飛ばした後、すぐに標的のいる地点へと向かった。その場所はハコンダテの城の近く。


 道中、海賊と遭遇してもマリウス達は必要最低限の相手だけをして目的地へと急いだ。城も近くに見えるようになり、まだ城が海賊達の手に落ちた様子は無い。兵士たちは死に物狂いで海賊達に抵抗している。


(城はまだ無事だし、領主が捕まったという情報は誤りなのか?いや…自分から前線で指揮を執っていたとすればあり得るか––––そしてまだ兵士達には主君が敵の手に落ちた事は伝わっていないと思われる。万が一の為にリンにお願いしておいて良かった…)


 後はなるようにしかならないだろうと、マリウスは一旦考えるのを止める。目的地のすぐ前まで到着し、皆が所定の位置に付いた事を確認する。


 三人ともマリウスが合図を出すのをジッと見つめている。タイミングを見計らって、マリウスが片手を上げた途端にカイが勢い良く通路へと飛び出した。


 突然騎乗した兵士が隠れ場所に現れたため、海賊達は泡を食って止めにかかる。


「ど、どっから現れやがったんだ⁈」

「なんでこの場所がバレてるんだ⁈」

「落ち着け!敵は一人、囲んでぶちのめしゃあいいのよ」


 海賊達がカイに近寄って来るのを見て、今度はフォーダとアベイルが二人同時に左側の通路(MAPでは下側)に姿を現す。


「貴方達の相手は一人だけじゃありません!」

「へっ、相手してやるぜ!」


 二人は戦力を分散させようとわざと声を上げる。その目論見は成功し、首領の守りに就いていた七人の海賊は見事に釣られてしまった。


 ダァッ––––––––––––––!!


 その隙を突いてマリウスは一番右奥の通路(MAPでは上側)が無人である事を確認し、全速力で駆け抜ける。


 海賊達はマリウスが走る音に気付き、一瞬そちらに気を取られてしまう。


「なっ⁈まだもう一人いやがった!」

「やばい、奥には大将しかいないんだぞ?」

「一旦戻れ!まずは大将に向かった奴を挟み撃ちに–––––」

 

 ドスッッッ––––––––––!


 敵の目前で一瞬とは言え、目を離した彼らは隙だらけだった。三人はそれぞれの通路の先頭にいた海賊を槍で一閃。あっさりと三人の海賊が戦闘不能に陥った。


「マリウス様の邪魔はさせません!」

「後ろ向いてる余裕なんてないぜ?」

「散って行った同胞達の恨み、お前達で晴らさせてもらおう!」


 フォーダ達が海賊達を引きつけている間に、マリウスは奥の通路の曲がり角に差し掛かった瞬間–––––。


 ブォンッ–––––––––––!


 空気を裂く音と共に、戦斧がマリウスの頭目がけて振り下ろされる。


 マリウスは咄嗟とっさの判断で走った勢いのまま地面を転がるようにして、斧を避けた。


「へぇ、やるねぇ…若いの。完璧なタイミングだったと思ったんだが。あれをかわすたぁ、線は細いが久しぶりに歯応えのありそうな相手じゃねぇか––––」

 

 マリウスは海賊の頭領が口を動かしている間に起き上がり、体勢を直す。そして真正面からこれから戦う相手を観察した。


(この人、強いな––––野盗のボスは鎧と兜が厄介だったが、その重量のせいで動きはやや鈍っていた。あの時とは違う戦い辛さだ…)


 筋骨隆々とした肉体は重い戦斧を軽々と振り回し、その巨軀きょくにも関わらず隙のない身のこなし。そもそも斧相手にレイピアも刀も受けるのは難しいため、マリウスの方から攻撃を仕掛ける必要がある。


 一瞬の間に戦闘の展開をシミュレートしたマリウスだったが、海賊の首領は何故か武器を下ろし話しかけてきた。


「楽しめそうな相手だと思ったが、時間切れだ。ほれ、向こうを見てみな?領主のくせして前線で指揮を執ったのはいいが、捕縛されちまった間抜けの姿をよ。部下に俺の所に連れて来いって言ってたのが役に立ったぜ…おら、お前らの大将を殺されたくなければ武器を捨てな!」


 首領の部下二人が捕縛されたフォーダの父を連れて来るのが見え、仕方なくマリウスは手にしていた袖の雪を地面に投げ捨てた。


 ちょうど残った海賊たちをやっつけ終えたフォーダ達だったが、新手の海賊達がよく見知った顔を連れて来たのを目にしてしまう。


「お父様⁈」

「「お館様!」


 三人とも冷静さを失い、大きな声を上げてしまう。驚いた首領の部下達だったが、片方の男がニヤリと笑いながら領主の首元に短刀を押し当てる–––––。




 いよいよ作戦も大詰めという所で、フォーダの父が連れて来られ人質とされてしまう。果たしてマリウス達は、人質を救い出して海賊の首領を討ち果たす事が出来るのだろうか?



 –––––後半に続く。




------------------------------------------------------

[あとがき]

 ここまでお読みいただき、ありがとうございます!戦闘MAP-②ですが、こんなシンプルなのでも結構時間がかかりました…というかマスを埋めるための文字か何かが無いとこれ以上しっかり作れなさそうです。次回までに素材を探しておかないと…((((´Д` ))))


 もし物語が面白かった・続きが気になるという方は♡や⭐︎と作品・作者のフォロー、また感想をいただけるとありがたいです( *・ω・)*_ _))

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