1-5 盗賊達との戦い(戦闘MAP-①)
(翌日の夜・ハコンダテ北東)
マリウス、アベイル、カイの三人は得た情報を基に盗賊達のアジトを突き止めた。拠点は森の中の洞窟の中にあるため、騎士の二人は近くの木に馬を繋ぎ鉄の剣を手にしていた。
昨日は人を集めるのにお金を使う事もなかったため、袖の雪を受け取りに行った際に近くの道具屋で傷薬を幾つか購入していた(2000ゴールド消費)。マリウスは傷薬をアベイルとカイにも手渡した。※残金8000ゴールド
「ありがてぇ、盗賊相手とは言え手傷を負うかもしれないしな」
「感謝する…それで、どういう作戦で奴らを叩き潰すつもりなんだ?」
マリウスは少し考えた後、アジト内に突入する流れを二人に説明した。
「まずは洞窟の入り口に立っている見張りが二人––––アベイルとカイに倒してもらいたい」
「ああ、いいぜ」
「わかった」
「入口を制圧したら、僕と二人の内どちらかが突入する。万が一敵を撃ち漏らした時のために二人のどちらかは入り口に残って逃げて来た相手を倒して欲しい」
アベイルとカイは顔を見合わせたかと思うと二人で睨み合いを始めた。どちらが突入するのかを無言で争っているようだ––––一分程の睨み合いの末、カイはやれやれと首を横に振る。
「よし、俺が中に突入だな!」
「仕方ない…スピードのあるアベイルの方が乱戦には向いているだろうしな」
「よし、役割も決まったしすぐにでも行動を開始しよう。恐らく盗賊達は自分たちが襲われるなんて
マリウスの指示に二人とも頷く––––作戦開始だ。アベイルは洞窟の右側から、カイは洞窟の左側から気付かれないようにゆっくりと見張りに近付いて行く。
二人が奇襲を仕掛けるまでの間…マリウスは洞窟すぐ近くの茂みに隠れ、見張りの会話に耳を澄ませる。
「今日はまだガキとは言え、忍の奴隷を売り払えたのはラッキーだったなぁ」
「ああ、商人も物珍しそうにして高値をつけてやがったからな。久々に儲かったからって中では宴会…親分もいい気なもんだぜ」
「全くだ…早く見張りを交代して、俺たちも酒を飲みてぇな」
やはり盗賊達が奴隷商に斡旋していた––––それよりも忍の子供という単語にマリウスは引っかかった。もしかしてあの時に目が合った子が?
(いや、今はその事を考えている場合じゃない…二人はもう所定の位置に付いているな。よし!)
マリウスは茂みから手を
「な、なんだ⁈」
「敵か⁈」
突然の物音に慌てる見張りたち。そしてマリウスが立てた音は陽動であると同時に、アベイルとカイへの合図でもあった。隙だらけの見張り達に二人が同時に襲いかかる。
シュパッ–––––––!
ズシャッ–––––––!
「い、一体何が起こって…ぐはっ!」
「ぐぇっ………」
何が起こったかも分からないままに見張り達は
「こうもあっさりと行くとは…マリウス殿の作戦も大したものだ」
「いや、まだ本番はこれからだよ。気を引き締めて行こう」
「ああ、それじゃあマリウス殿…中でおもいっきり暴れ回ってやろうぜ?」
やる気満々のアベイルは勢い良く洞窟に飛び込む。マリウスも新しく手に入れた刀、袖の雪を両手で握り締めながら後を追う。
洞窟内は暗かったが、一本道の奥の方から灯りが漏れていた。恐らくあの奥が野盗のアジトで、残りの賊がいるのだろう。
「アベイル、一気に飛び込むよ!」
「了解!」
二人が奥へと侵入すると、中は明かりが灯されており空間が開けていた。マリウスはすぐに辺りを見回して敵の様子と頭数を把握する。
[戦闘MAP-① 盗賊のアジト]
╔═════════════╗
盗⃝ 盗⃝ 盗⃝
マ⃝ア⃝
盗⃝ 盗⃝ 盗⃝
╚═════════════╝
※マ:マリウス、ア⃝:アベイル、盗:盗賊、頭:野盗の頭領
(普通の盗賊が十人。奥に兜と鎧を着込んだ男が一人。思ったよりも数が多いが…油断し切っていてかなり酒が回っている––––これならいけそうだ)
「アベイルは中央と左側(MAP下側)の敵を殲滅するんだ!僕は右奥の相手と奥に居るボスらしき男を倒す!」
「分かった、そっちも気を付けてな!」
「て、敵襲だと⁈」
「見張りの奴らは何をしていたんだ?おい!お前ら、さっさと武器を取って宴の邪魔をする奴らをぶち殺せ!」
盗賊達は慌てて立ち上がり武器を手にするものの、酒の影響もあってか動きが鈍い。
一方、アベイルはマリウスの指示通りに中央の一番入り口に近い盗賊へと斬りかかった。
ダダダッ––––––ザシュッ!
「ぐあぁぁぁっ!」
一気に盗賊に駆け寄り、肩口から袈裟斬りに一閃––––。まだ武器も構えられていなかった盗賊は、断末魔を残して絶命した。
「–––––次!」
アベイルは一人目を斬った勢いのまま、すぐ近くにいた盗賊へと向かった。二人目の盗賊も酒に酔い、フラつきながら短剣を持って構える。
「くっ、くそぉっ!なんだってこんな時にっ…⁈」
「へっ、油断してるからそうなるんだよ!」
盗賊はなんとか短剣でアベイルの剣戟を防ごうとしたが、騎士の腕力で振るわれた長剣に耐えられるわけもなく短剣を弾かれる。
「あぁぁっ⁈剣が…」
「隙だらけだぜ、おっさん!」
「ぐっ……」
シュパァッ–––––!
アベイルは振り抜いた剣の反動を利用して逆方向に盗賊の胴を薙ぎ、深く切り裂いた––––間違いなく致命傷だろう。
一方のマリウスは右奥(MAP上側)の盗賊達に向かって行く。走りながら横目でアベイルの活躍を見ていたが、身軽な盗賊のお株を奪うような素早い動きで生き残っている盗賊達を追い詰めていた。
(フォーダが認めていただけあってかなり腕は立つな…よし、僕も負けていられない!)
右奥に居た三人の盗賊達はどうにかマリウスを迎え討とうと、同時にマリウスへと襲いかかった。
「三人でかかればこんな優男…!」
「舐めるなよ!」
「くたばりやがれっ!」
盗賊達は短剣をマリウスに向かって振り下ろそうとするが––––振り下ろす前に彼らに袖の雪の白刃が迫る。
「「「へ–––––––?」」」
マリウスは遠心力を利用して円を描くように刀を振るうと、盗賊達が気付いた時には胴体から下が真っ二つになっていた。
(この袖の雪…とんでもない斬れ味だ。これほどの業物、大事に使わないと…特に野盗の頭領のように、装備を固めているような相手には無理に使っては刀を折ってしまいかねない––––)
野盗の頭領は戦斧を担ぎ、鋼の鎧とハーフヘルムを着用していた。この男だけは明らかに戦闘慣れした雰囲気を醸し出している。
「ほぅ…若いが良い腕してるじゃねぇか。それにその刀、相当なもんだが…果たして俺に通用するかな?」
中央奥に残った野盗の頭領と、その前にもう一人震えながら短剣を構える盗賊がいる。
マリウスはまず正面の盗賊との距離を詰め、タイミングを見計らって斬りかかろうとしていたが––––。
「おらっ、少しは俺の役に立って死ね!」
「う、うわあぁぁぁぁぁぁっっ!」
頭領からの圧力に押されたか、マリウスの予想に反して目の前の盗賊が切り掛かって来る。一瞬反応が遅れたものの、マリウスは袖の雪を力一杯横に薙いだ。
「ぐぇっ……!」
盗賊は一撃で絶命したが、背後に隠れていた頭領が一気に距離を詰めており––––マリウスの脳天目掛けて戦斧を勢いよく振り下ろそうとしていた。
「死ねっ、小僧!」
「くっ………!」
先の盗賊を倒す時に無駄な力を込めてしまったせいで、マリウスは体勢を崩していた。これでは斧が自身に届くよりも前に刀を振るう事は叶わず、かといって細身の刀で重量のある戦斧の衝撃に耐えられるとは思えない。
(だったらもうこれしかない–––––!)
マリウスは頭領に向かって瞬時に踏み出し懐へと潜り込む。予想外の行動に頭領は驚いたが、逆に距離が近過ぎて充分に刀を振るえないと判断した。
しかし。マリウスは刀を手放して腰に
目にも止まらぬ鋭い突きが、鎧とハーフヘルムではカバー出来ていない首元に突き刺さる。
ドスッ––––––––!
「か、かはぁっ…そ、そんな、バカな…けひゅっ」
マリウスはゆっくりとレイピアを引き抜くと、大きな音を立てて野盗の頭領が倒れる。
「おい、大丈夫か⁈」
左奥の盗賊も殲滅し終わったアベイルが心配そうにマリウスの元に駆け寄ってくる。
「はは…なんとかね。無事倒せて良かったよ」
「あの親玉は流石に俺でもキツいぜ?よくもまあ一人で倒しちまったもんだ…」
こうしてマリウスは、無事に(?)野盗のアジトを壊滅させる事に成功したのであった––––。
[戦闘の結果]
マリウス)
:腕力が1上がった!
:器用さが2上がった!(技と同等)
:素早さが1上がった!
:幸運値が1上がった!
:防御が1上がった!
アベイル)
:腕力が1上がった!
:器用さが1上がった!
:素早さが1上がった!
:防御が1上がった!
※本作ではレベル制を設けておりません。その代わり一定の戦闘を熟したらランダムに能力が向上します。各キャラクターのパラメータがどう変化したのか、章末に記載する予定です。
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[あとがき]
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
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