曇りガラス、打ち割るべし
夢産懐郷
第1話 廃墟探索
その廃病院は、地元ではわりと有名な心霊スポットだった。
その廃病院は地方都市と地方都市を結ぶ県道の中間地点、脇道を逸れて少し山奥へ登った場所にある。
地方郊外であることを加味しても異常に広すぎる駐車場に自転車で乗り付ける。
自転車は入り口からもっとも遠い駐車場の隅に寝かせて置いた。こんな無法地帯で移動手段を盗まれることだけは避けたい。
山奥ということもあってか、夏とは思えないほど涼しかった。
ライトを付けて辺りを見渡してみる。
駐車場の奥には冷蔵庫、タイヤなどが散乱していた。
建物側に明かりを移動させてみると、施設がぼんやりと照らされた。コンクリート建築の三階建て。奥行きはここからだと全く見えないが、そこそこな大きさだった。
ライトをゆっくりと下へと向ける...と、中央の玄関口と2台の自動車が写し出された。
一台は紺色のワンボックスカー
もう一台は....軽バンだった。
先客がいるのか ....
こんな場所にくる人間だ。どんな危険があるのかわからない。不用意に関わりたくないので、ライトを消した。
代わりに車に近づき、スマホのライトでよく見てみる。
軽バンの方には、いくつかステッカーがあちこちに貼られていた。
見慣れた車だ。持ち主は誰なのかすぐにわかった。
その時、病院内から複数の笑い声と叫び声が聞こえてきた。3、4人はいるようだった。
この廃病院にいる人間たちが誰なのか分かった時点で、いよいよ彼等と鉢合わせるわけにはいかなかった。
出来ることなら引き返したい。
だがそうもいかなかった。僕は、2つの目的を今夜中に達成しないといけなかったからだ。
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