エピローグ

冬物語(終幕(ファイナル)) 「試験当日」

第68話

 鬼隠市内、曇り空、二月中旬の某日。龍樹涼守と久我律華は明陽館学園高等部の入学試験を受けていた。二人とも滑り止めを受験していない。正に一発勝負。


 試験会場は極度の緊張感が支配している。倍率は三倍以上、この中の三分の二は試験後、この学園の門を潜る事が叶わないのだ。


 涼守と律華は次々と試験問題を解いていった。



 入学試験が終了した。二人は試験会場を後にし、路面電車に乗り込んだ。

「涼守、どうだった?」

「どうだろう。スゲー難しかった」


 相変わらずのネガティブ発言。だが、表情は穏やかだ。手応えは十二分。

「律華は?」


 不敵な笑み、可愛いのにいつも通り、イケメンだ。


 二人とも合格圏内だという自覚はあった。そして合格すれば晴れて明陽館学園高等部の同級生となる。


「後は、お姉ちゃんのプロテストだけだね」

「うん」


 路面電車に揺られながら、涼守は曇り空を見上げた。

「翔琉先輩、絶対合格するよ」

「……そうだね」


 しばらく路面電車に揺られている二人。不意に律華が。

「ねえ涼守。お姉ちゃんが東京行っちゃったら寂しくなる?」


 涼守をジッと見つめた、聞きたいような、聞きたくないような。複雑な気持ちだ。

「先輩の夢が叶うんなら、それでいいよ」

「強がり?」

「え?」


 律華は真っ赤になっていた、それでも涼守をジッと見つめている。

「わたしは、うん。わたしは涼守の側にいる、ずっと、ずっといるからね」


 それは、かなり遠回しの「告白」だった。

「まぁ、同級生になればそうなるね」


 涼守は鈍い、律華の遠回しな告白に気付いていない。

「もう!」


 律華は拗ねた。

「律華、これからどうするの?」

「うーん。考えてない」


「じゃあ、ファミレス寄ってく? 試験終了パーティーみたいな」

「オッケ。じゃあ涼守の奢りで」


 律華は笑った、そしてまた少し涼守との距離をつめた。

「わかった」


 二人は繁華街セントラルへと向かった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る