4-6
「ねえ、ララとシャイアはどうやって出会ったの?」
何度目かの訪問。
私とララはすっかり仲良くなっていた。
夫の浮気相手候補とこうしてのんびりお喋りするのもどうなんだ? と思わなくもないけれど、実際ロクサーヌ様とはそれでうまくいってるし、いいか。
何よりこの子かわいいんだよね。
ギャルっぽいけど。
「えっとぉ、あたしがトモダチと取っ組み合いのけんかしてた時だったかな。あたしにだけお菓子を分けてくれなくて、それで取っ組み合いになったんだけど。それで勝ったんだけどおばあ様に怒られちゃって。譲り合いの心が大事ですって。でも最初にあたしだけのけ者にしたのは向こうなんだよ? それで一人で怒ってたら、オシノビで来てたシャイアお兄さまが見えてね。あんまりキレーなお顔であたしもうウットリしちゃって。そしたらシャイアお兄さまもあたしの事見つけて、びっくりした顔してたんだけどそれがまたステキっていうかキューンとしちゃったの。キレーな人ってびっくりしててもキレーなんだなって思ったんだ」
「そうね」
シャイアは本当に驚いただろうな。
たまたま行った孤児院で、初恋の相手にそっくりの女の子が自分を見てるんだもん。
「それでね、君は誰? って聞くからララです、ここに住んでますって言ってぇ、家族は? って聞くから神子のルルー様がおばあ様なんだけど内緒なのって」
子どもに内緒は通じない……。
「それでね、私はシャイア、また来るねってお菓子くれたの。おばあ様に取り上げられたやつよりもっとゴーカでオイシイやつ! もう夢みたいって思った! それで時々礼拝堂に来るようになって、来たらいつもあたしのところに来てくれてね、お菓子とかお花とか持ってきてくれるの。孤児院にも刺繍針と糸のセットとかいっぱい寄付してくれてね。でも一番すごいのはね、あたしが悲しい時、会いたいなあって思った時はいつも来てくれるんだよ。今まで誰も来てくれなくて、一人で泣くときもあったんだけど、シャイアお兄さまはすぐ来てくれてね、かわいいお花をくれるの。オウジサマみたいでしょう?」
事実生まれは皇子だからなあ、とかは置いておいて。
「ララはシャイアが好き?」
「だいすき!」
「お嫁さんになりたい?」
「うん。でも、ロゼアお姉さまのことも好きだよ。優しいし、話聞いてくれるし。シャイアお兄さまにお嫁さんがいたのはそりゃあ、悲しかったけど、あたしだけのオウジサマじゃなかったけど、でもシャイアお兄さまは、あたしの大事な人なんだ」
ぎゅっと胸に手を当てるララ。
私はどう返事していいか分からなくなってしまった。
「私も、また、来るね」
そういうとララは、嬉しそうに笑ってくれた。
「おかえり愛しいロゼア。今日はララ様のところ?」
家に帰ると、珍しくシャイアが来ていた。
いや、一応彼の自宅はここなんだけどね。
「ええ。シャイアはララのところへは行ってるの?」
「昨日行ったところだよ。彼女、かわいいだろう?」
正妻に向かって言う言葉なのかしら。
まあララはまだ未成年だしね。
「ええとっても。姪御さんだからかしら、皇后様に似ておられるわね」
試しにそう言うと、一瞬の間があった。
「そう見えるかい?」
「ええ。貴方の方が皇后様とは親しいでしょう? 似てると思わなかった?」
「…すごく似てると思ったよ。初めて見た時は息が止まるかと思った」
そうでしょうねえ。
想い続けている相手が小さくなって現れたようなものだもん。
「今日は君に相談があって来たんだ」
なんだろう。
ララを引き取りたいとでも言うのかな?
「祖母が生前使っていた屋敷があるだろう?」
急にララから話題がそれたので拍子抜けした。
けど、少しホッとしてもいる。
多分私とシャイアは、そこまで腹を割って話し合える関係ではないのだ。
「あの二番街の?」
そういうとシャイアは頷く。
シャイアの言う祖母とは、母方の祖母の事。
シャイアの母である第四妃殿下は辺境伯家の生まれで、かの家が所有する屋敷が二番街の片隅に存在している。
今は亡き第四妃殿下をはじめとする、辺境伯家の縁者が学園に通ったりするときに利用していたはず。
「しばらく誰も使うことがないらしくてね、伯父から手入れを頼まれたんだ。この際だからちょっと手を入れて、別荘として使おうかと思うんだけどどうかな」
「良いんじゃない? そっちに住むの?」
「流石に拠点を移すつもりはないけれど……人が住まないと屋敷は荒れるというしね。何年かしたら子爵家の令嬢が入学するから、その時に使えるようにしておきたくてね」
どう? と問いかけられる。
「良いんじゃないの? 一度くらい招待して頂戴ね」
そういうとシャイアはひどく驚いた顔をした。
ララの言う通り、驚いているときも顔がいい。
「君がそう言ってくれるとは思わなかったよ」
何をそんなに驚くことがあったんだろう? 反対すると思っていたのかな?
よくわからなかったけど、屋敷よりララをどうするつもりなのかが気になっていた。
ただここで「屋敷にララを引き取るつもり?」とは聞けない。
そうされたくない訳ではないんだけど……。
なんというか、建前が難しいのよね、色々と。
後書き
シャイアの父親は現皇帝。母は幼いころに亡くなった第四妃。
ちなみに第一、第二、第三、第五妃はご存命です。
皇太子は第一妃、ファイラ君は第二妃の息子です。ララの叔母にあたるのは第五妃。
お妃さま方、ギリギリまで削ったんですがどうしても五人は必要でした。源氏物語にはもーーーーーっといっぱいいます。
次回は久しぶりにあの方々が登場。
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