25年 秋の雰囲気作文『こがねの山』
晴れた晩秋――暦の上では一応「晩秋」な、霜月のある土曜日。アクティブな大家に誘われた美郷は、大家の運転するセダンの助手席に乗った。目的地は「山らへん」、とりあえず尾道と松江を繋ぐ自動車道に乗って、北を目指すという雑なドライブだ。
しかもより多く道の駅を経由するため、巴市街地は下道を走って
温泉宿に併設された物産館でひと玉三百円の白菜を見付け、これで目的の半分は達成したと喜びながら
尾道松江線の最高標高点は口和-高野間にあり、その標高は637メートル。トンネルと陸橋で繋がる自動車専用道はまさに天空の道だ。晩秋の晴れ空は頭上高く広がり、周囲を「やまなみ」が囲む。
長い上り坂のトンネルをひとつ抜けると、突然周囲の季節がひとつ進む。トンネルを抜けた瞬間、目の前に現れる赤い山々に、感動して声を上げたのは昨年だったか一昨年か。今年はまだ「ちょっと黄色いかな」程度の稜線を眺めて「見頃は来週だねえ」などとコメントする。
それでも下界よりもはっきり「秋」を感じる風景を楽しみながら高野ICに到着すると、駐車場は満車状態の道の駅が見えた。
毎年「秋」を味わうために、高野を訪れるのはなにも自分たちだけではない。賑々しい駐車場と、屋外店舗。土日だけと思しきアップルパイや、神石高原名産のコンニャクと和牛すじ肉の煮込みなどが食欲をそそる匂いを漂わせている。店舗内ではうどんやカレーを供するフードコートが賑わい、産直市の野菜を大勢の客が物色していた。
「昼どうする?」
「んんー。ここで食うのはちょっと、待つのが
ちょうど昼時、出汁の匂いに食欲を刺激されて、何を見ても美味そうに見える。惣菜コーナーの寿司やパンに目移りしながら、ひとまず名物のアップルパイを一人一個確保、怜路のお眼鏡に適った大根を持ってレジへ向かう。
「リンゴは?」
「直売の方回ってみようぜ」
アップルロードには数件のリンゴ農家が直売所や観光りんご園を開いている。この時季に通れば道の両脇に、ふじと思しき真っ赤で大きなりんごをたわわにつけた樹が立ち並んでいる。その「豊か」な様は、見るだけでも幸せな光景だ。
数軒の直売所を回って、「あいか」と表示された大きく赤いリンゴを一袋と、他に製菓用と思しき小さなリンゴが多く入った袋を買った。どうやら怜路はジャムを作る気らしい。
「ご飯どうしよっか」
「
十一月は新そばの季節だ。奥出雲産の出雲蕎麦を目指し更に自動車道を北上する。正面には遠く屏風のように中国山地の山壁が広がり、その色は周囲よりも更に季節が進んで見えた。
広島と島根を隔てる山を貫いた、五キロメートル弱にも及ぶトンネルを抜ける。トンネルはずっと下り坂で、抜けた先の山々は北上したにも拘わらず緑色に戻っていた。
雲南
順番が来たのでレストランに入り、こちらも奥出雲名産、舞茸の天ぷらが載った十割蕎麦を頂く。濃い色の蕎麦と、出汁の利いたつゆ、舞茸天の油が絡まって口福を連れてくる。体も芯から温まり、二人で機嫌良く再び車に乗り込んだ。
「帰りは五十四号通るか~」
県境の馬鹿長いトンネルを引き返すのが面倒だったらしく、怜路がそう言った。
土地勘があまりないため、この掛合・頓原区間が県境の高野や赤名と比べてどの程度の標高なのか把握しきれていないが、道路脇の山から掛かり落ちる木々の枝葉は、黄金色に染まって輝いていた。折しも太陽は南西に傾き始める頃合いで、遠く柔らかな光を注ぐ太陽が、その黄色くに染まった枝葉を照らして、一際目映い黄金色に光り輝かせる。
「綺麗だねえ……」
思わずうっとり呟いた。紅く染まる山も良いが、黄金色もまた素晴らしい。
山肌近くに繁る低木の、楓や漆は既に朱や橙に、色鮮やかに色づいている。背の高い木々はその枝を黄金に染めて、所々にまだ青々とした葉も残していた。
「来週も来るかー?」
「や、流石にソレは……財政が……」
出掛けて散財するな、というのも酷なのだ。節約したければ出ないに限る。
「この辺ほど鮮やかにはなんないだろうけど、近所の山が紅葉するのを楽しみに待つよ」
そんな会話を交わしながら、美郷と怜路は帰途に就いた。
秋の雰囲気作文:おしまい。
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レッツやまなみ街道ドライブ!!!! 秋の中国山地はいいぞ!! な突発作文でした。
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