エピローグ 帰ってきたパラサイト魔法少女うるうるーVS超巨大怪獣

第49話 エピローグ 帰ってきたパラサイト魔法少女うるうるーVS超巨大怪獣


 委員長に土下座をし、他の星との交信をはじめとした、全人類エイリアン化計画に全面的に協力をするという約束で自分の操を守ってから、はやくも三か月が経とうとしていた。


 委員長は、デルデド星人を退けた次の日には普通に学校に登校し、周りを驚かせていた。しかし、急に姿を消し、急に姿を現した委員長に周囲の人間がそこまで驚かなかったのは、委員長が奇人だからなのだろう。


 委員長は、頭上の寄生紋パロテクトを隠すため、帽子を被ったり髪でお団子を作ったりして、上手く隠しているようだ。

 ちなみに私も、学校では包帯で、プライベートではチョーカーで首の寄生紋を隠している。私も委員長も恐らく、まだ半エイリアンだということはばれていないはずだ。

 もう少しで、春木博士がデルデド星人の迷彩機能を解析、応用した道具を作ってくれるらしい。それがあれば上手いこと寄生紋を隠せるようだ。


 委員長の帰還を一番喜んでいたのは、私の知る範囲ではセイナだろう。

 私と委員長とセイナの間には、なにか奇妙な絆のようなものが生まれ、たまに三人でご飯を食べるような仲になった。勿論セイナには、私たちの中にエイリアンがいるということは言っていないのだが。

 エイリアンと交信を試みる委員長とセイナを手伝う日々は、案外と楽しいものだった。


 博士はというと、デルデド星人の肉片を解析し、エイリアンの研究を続けているそうだ。どうやら彼女は、裏の世界ではかなり名が知れている存在のようなのだが、エイリアンの存在が公表されていない間は、彼女の名前や発明が日の目を見ることはないのだろう。


 ラボにはたまに遊びにいくのだが、椎名さんは相変わらずだった。ラボにいる彼女は、博士の世話をするか、ずっと自分の体を鍛えていた。折れた足はもう、なんともないようだ。

 彼女にはたまに、博士との進展を聞くのだが、やはりというかなんというか。関係は一切進んでいないらしい。ええい、もどかしい。


 ……それで、私はというと。


 数か月後。


「ゲトガー。この辺り一帯に迷彩を施せる?」

「やってみるか」

 博士がデルデドの迷彩布を解析、改造した道具に、私は部分魔法少女化した右手で触れた。


 私は今、海岸にいる。辺りから聞こえるのは潮騒の音くらいで、周りには一切人はいない。が、迷彩を施すにこしたことはない。私は別に、目立ちたいわけではないのだから。


 改良迷彩布を右手で武器化し、空の彼方に放り投げる。すると、その布は私の思った通り、辺り一帯をドーム状に覆ってくれた。


 それで私はというと。デルデド星人との決戦後、大量に転がっていたエイリアンの死体をむさぼり食らい、なんとかゲトガーの力を完全に取り戻すことに成功していたのだった。


 しかし、完全なる魔法少女と化しても、特に敵もいないし、やることもないだろうと思っていた。思っていたのだが。

 一度デルデド星人たちが地球にやってきた影響なのかどうかはわからないのだが、あれ以来、エイリアンやその他の見たことのないUMAや妖怪、幻想生物等が、たまに地球上で目撃されるようになったのだ。


 博士が言うには、デルデド星人たちがきたことによる地場の狂いがどうやらなんやらと、難しいことを言っていたが、よくわからなかったので、わかったふりをして話を聞いていた。だから、よくわからない。


 そいつらの中には、人間に害をなさない者も多いのだが、がっつりと人を襲うやつらも少なくはない。


 そういった生き物を、私は人知れず魔法少女として退治しているのだ。


 ……ちなみに、委員長はエイリアンがきたとき以外は、全く私を手伝ってくれない。エイリアン以外とは戦いたくないらしい。なんだそれ。まあ、悪いエイリアンのことは庇わず、普通に倒してくれるから、その点は助かっているのだが。


 唐突に、海の一部が盛り上がる。

 高い波を生じさせながら海面から姿を現したのは、角を顔から二本生やした。巨大な怪獣であった。その顔は分厚い鱗のようなもので覆われており、簡単には攻撃が入りそうにない。


「……あんなの、今までどこに隠れてたんだろうね?」

「海じゃないか? 海は広いんだろ?」

「さすがに宇宙よりは狭いよ」


 海面から顔を出し、一歩一歩こちらにやってくる怪獣の姿を眺める。……ん? 顔だけで、小さめのビル一棟分くらいの大きさがないか? となると、一体、全長はどれほどのものなのか。


「これは、完全変身じゃないとちょっとしんどいかもね」

 私は、人間のままの左手首をゲトガーがいる首に押し当てた。ゲトガーの牙が、食い込み、血が吹き出す。


「――変身」

「――変身」


 ゲトガーの力が、私の体全体にいき渡る。私の全身は、パンクな牙の模様があしらわれた、真っ黒なドレスのような服装に包まれる。


「パラサイト魔法少女うるうるーちゃん、ここに参上」

「なんだそれ」

「今考えた」


 完全な魔法少女になった私は、改めて大怪獣と向き合う。


「ねぇ、ゲトガー」

「なんだ、マジカルガール」

「いっしょに見にいこうね」


 それだけでゲトガーは、私がなにを言いたいのかわかったようだ。

 まるで祝福でもするかのように、海風が私の髪を撫で、カモメが鳴いていた。


「そうだな。ルー」


 ゲトガーの微笑みのあとに、私はこう続けた。


「魔法少女の夢の先を」

 二人で、見にいこう。



 fin


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