路上占い、あれこれ㉓【占い師は“持っている”②】

崔 梨遙(再)

2072文字! いかがですか?

 4歳の頃、僕はシンガポールに住んでいました。近所の公園でよく遊んでいました。遊ぶといっても、僕はシーソーやベンチに座ってボーッと空想をするだけ。空想の世界の僕は、いつもスーパーヒーローでした。公園の端の方には少しだけ菜の花が咲いていました。そこには、僕と同じくらい、4~5歳の2人の女の子達の遊び場。どこの国の子かわかりませんでしたが、肌の色から外国人だということはわかっていました。


 或る日、その女の子達がベンチに座っている僕の方へやってきて、菜の花の花束をもらいました。


 帰ると、僕は母に『おもちゃの指輪とペンダントを買ってほしい』とお願いしました。母は理由を聞き、僕の話に納得して指輪とペンダントを買ってくれました。


 翌日、僕の方から女の子達に近付き、まず2人にペンダントを渡しました。喜んでいましたが、何を言っているのか? わかりませんでした。そして、花束をくれた方の女の子には追加でおもちゃの指輪を渡しました。


 その頃、僕達は日本に帰ることが決まっていました。僕はそれからしばらく公園にも行かず、やがて僕達は日本に帰りました。4歳の時にこんなドラマが! それは僕が紅艶を持っているからかもしれません(笑)。ありそうでなかなか無い想いでだったと思います。




 シンガポールから日本に帰る時、ペットの子犬のシロを連れて帰れないということになりました。シロは僕の親友でした。離れたくなくて泣きわめきましたが、やはり日本には連れて帰れません。シロを引き取ってくれる人を探したら、近所の中国人のオッチャンがもらってくれることになりました。


 シロを渡した翌日、僕は早くもシロに会いたくなってその中国人のオッチャンの家に行きました。庭にはいませんでした。元々室内犬でしたので、家の中にいるのだろうと思い玄関チャイムを鳴らしました。オッチャンが出て来ました。


『シロは? シロは?』

『ああ、美味しかったよ』


 僕は号泣。泣きながら日本に帰りました。




 僕が30代の時、僕の住んでいたマンションから徒歩10分くらいのところに『大人の本屋さん』がありました。要するに、エロ本、DVD、おもちゃなどを売っていた店です。僕のお目当ては本。最近のエロ本にはDVDがついてきます。ですが、買わないと中身は見れないシステム。表紙と裏表紙だけで『自分の好みの女優さんが載っているか? DVDに出ているか?』見抜かないといけません。こちらも真剣です。ハズレのDVD4時間の苦痛を知っているからです。


 その夜はお客さんが僕だけでした。僕はいつも通り、1番奥のコーナーで本を物色していました。


 すると、レジの方から声がしました。


『テヲアゲロ! オトナシクシロ!』


 振り向くと、全身黒ずくめの男が包丁かナイフで店員を脅していました。僕はスグにまた壁の方を向きました。


『カネヲダセ! フクロニイレロ!』


 僕は想像しました。僕が助けに行く → 僕が刺される → BADEND。このまま放っておく → 店員が刺される → BADEND。ダメでした。BADENDしか思い浮かびません。


 僕は、背景に溶け込むことにしました。幼稚園の学芸会で、木の役を演じた時のことを思い出しながら・・・。


 静かになったようなので、ゆっくりレジの方を見ると、店員さんがボーッと座っていました。良かった。怪我は無いようです。


『大丈夫ですか?』

『あ、はい、大丈夫です』

『警察に電話した方がいいのでは?』

『あ、そうでした』

『あ、その前に』

『何か?』


『これ買います』


 幼稚園の時に木の役を演じた経験が役に立った? という話。




 僕は学生時代、通学は満員電車だった。


 或る日、顔色の悪い美人がいるのに気付いた。OLなのか? 学生さんなのか? わからなかった。『もしかしたら、人混みで気分が悪いのだろうか?』僕は満員電車の中、その美人に近付いた。美人の顔色が悪い理由がわかった。美人のお尻を毛むくじゃらの手が触っていた。『痴漢だ!』僕は毛むくじゃらの手を掴んで捻りあげた。


『やめといたりぃや』


 次の駅で、毛むくじゃらは慌てて降りて行った。僕もその駅で降りる。すると、降りて来た美人が僕に声をかけてきた。


『あの!』

『はい』

『ありがとうございました』

『いえいえ、当たり前のことをしただけです』


 その美人は次の電車に乗って去って行った。


『え! それだけ? “ありがとう”だけ?』


 僕は驚いた。こういうイベントって、美人とお付き合い出来るものなんじゃないの? ドラマでは、こいうことから恋が芽生えるのに・・・。僕はその時、現実の厳しさを知った。




 学生時代の満員電車、吊革を掴んで眠気に耐えていると、股間の刺激で目が覚めた。見ると、毛むくじゃらの手が僕の股間を撫で回している。一瞬、驚きのあまり硬直した僕だったが、次の瞬間、その手の指を掴んで折った。次の駅で、片手を押さえながら降りていくスーツ姿のオッサンがいた。追いかけたかったが、人混みで捕まえることは出来なかった。


 僕は駅員に報告した。


『痴漢がいました』

『そうでしたか? で、被害者の方は?』

『被害者は僕です』


『え?』




 今回はここまでとさせていただきます。m(_ _)m







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路上占い、あれこれ㉓【占い師は“持っている”②】 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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