初めは少しおどろおどろしく、ホラーが苦手な私は読むのを躊躇ってしまったのですが、読み進めているうちに寓話的な展開から、出会いと別れが描かれており、その様は異様なもの故の哀愁や情動が言葉からこぼれ落ちてくるようでした。
石瞳というタイトルの美麗さから連作に目をやると、ごつごつとした肌触りの物語にホラーかなと思いきや、また再び情景へ戻り、表題以上の美しさと前向きさに心を突き動かされます。言葉回しも少し古典みを帯びていると思えば、読みやすさもあり、清涼感もある。これも短歌だからこその良さなのかもしれません。
『元人も〜』という作品は恐怖の中の化け物の哀愁みたいなものを自然の描写と共に感じられ、『君の花〜』で世界のどこまでも行けてしまえるような心象風景、そして最後の一首が『目を閉じて〜』が視界が開けるような涼しさを纏う三十一字でした。
素敵な作品群でした。