とある子供部屋での小戦争

ここは、どこかのおウチの子供部屋（こどもべや）の片隅（かたすみ）。

夜、眠りについた子供たちの目を盗（ぬす）んで――ぬいぐるみたちとフィギュアたちが目を覚ます。

「今日（きょう）こそ、我（わ）が『モフモフ軍（ぐん）』が一番だって証明（しょうめい）してみせるモフ！」

モフモフ軍の指揮官（しきかん）・ウサギ将軍（しょうぐん）が、耳をピンと立てて宣言（せんげん）。

「フフフ、造形美（ぞうけいび）こそが至高（しこう）なのだ。我々（われわれ）のキラキラ鎧（よろい）（※プラスチック製）を見るがよい！」

対するは、アクションヒーロー気取りのフィギュア軍の指揮官・フィギューア団長（だんちょう）。関節（かんせつ）をカチッと動かして、ポーズを決める。

第一陣

クマのぬいぐるみたちが「ごろーん」と転がって、フィギュア軍に突撃（とつげき）！

フィギュアたちはクマのぬいぐるみたちの突撃によって、次々に押し倒されるが、すかさず立ち上がり、必殺技（ひっさつわざ）である「かっこいい三段ポーズ」を決めて、反撃（はんげき）スタート。

ぬいぐるみ軍は「うわー！ポーズがカッコよすぎて目が眩（くら）んでしまったモフ～！」と徐々に後退（こうたい）。

第二陣

今度はフィギュア軍の美少女戦士が「キラキラ☆スマイル光線（ビーム）」を浴びせて、モフモフ軍たちを魅了（みりょう）。

だが、モフモフ軍も負けじと「ふわふわハグ！」を繰り出して美少女戦士（びしょうじょせんし）フィギュアを捕獲（ほかく）。

「ぬ、温（ぬく）もり……！温（あたた）かい……！でも私はそんなものには負けないっ！」

ハグされながらも必死にポーズを崩（くず）さない、美少女戦士フィギュアの姿に、子供部屋は笑い声でいっぱいになる。

やがて、モフモフ軍とフィギュア軍の戦（たたか）いは夜更（よふ）けになるまで続き――気づけばみんなゴチャっと山になって眠ってしまっていた。

ぬいぐるみの柔（やわら）らかいモフモフ感触と、フィギュアの硬い感触が混（ま）ざり合って、意外と寝心地（ねごこち）がいいらしい。

翌朝（よくあさ）、その家の子供が目を覚まして一言つぶやいた。

「うわぁ、ぬいぐるみさんたちとフィギュアさんたちが、仲良く寝てる！かわいい～！」

そしてその日から、モフモフ軍とフィギュア軍との戦いは、

『仲良（なかよ）しごっこ』という新しい名称（めいしょう）に変わっていたのだった。