十一月十八日
先日ロッカー工場の勤務で大しくじりをした。正午までに起きなければならなかったのに目が覚めてみれば十三時だった。まともな人間であればそこから跳ね起きて身支度をして出勤するであろう。ところが規格外品の私はそうでなかった。絶望感と共に現実逃避をするようにして再び眠ったのだ。そうして次に目を覚ました時、時刻は十六時だった。そこから言い訳の電話を入れて、結局その日は出勤しなかった。どうだ? こんなクズっぷりは。やはり私はまともに社会で生きてゆくことができないのだ。もし次に職場に遅刻するようなことがあれば私は職場を止めてしまおうと考えている。こんな不誠実な人間をいつまでも雇っていては会社にとって大きな迷惑だ。ただ予定の時間に間に合うように起きるだけのことが、どうして私にはできないのだろう。意思が弱いのか習慣の所為か、はたまた別の要因か。いずれにしてもこの性質が治らないうちはまともな社会生活など望めない。
ここにひとつ、単純な解決策がある。早く就寝すればよいのである。しかし、それができない。どうして? 明日が来ることが怖いのである。明日、起きられなかったらどうしよう、職場でこんなことがあったらどうしよう、将来にこんな不安がある。考え始めれば思考は螺旋を降りてゆくようで、明日が怖いばかりに必死に今日を延長しようと深夜を過ぎても起きているのである。時にはまだ今日が終わっていないことを確認するかのようにして飲みたくもない酒を飲むこともある。最近ではどうやらその頻度も高くなってきている。
まともに生きてゆくだけのことが私には難しいのである。どうしようもない、こんな人間。そんなことを考え始めると過去の失敗ばかり思い返され、自身で自身がどれだけ駄目な人間かを再確認しているのである。幼い頃の空手教室での失敗、未熟だった高校時代の言動、教育実習での失態、就職活動の中で犯した取り返しのつかない失敗。このようなことを思い返しては自身が駄目な人間であることを確認するようにしているのであある。
もういよいよ駄目かもしれない。日々、ただ生きてゆくというだけのことが堪らなく苦しい。どれだけ頑張っても世間に馴染むことのできないという勇敢な人々と私は同列でないのだ。頑張ることをせずに自身の至らなさを嘆いているだけのことなのだ。みっともない。
今日もまた終わってしまう。また明日が来てしまう。明日何かしでかしはしないかと考えると焦燥感にも似た感覚が湧き上がってくる。退路は無し。どれだけ今日にしがみつこうとも、強制スクロールで明日へと運ばれてゆくのだ。何処までも自分が堕落してゆくような、腐敗してゆくような気がする。そしていつか気づいた時にはもう取り返しのつかないことになっている、そんな気がするのだ。
いい加減で覚悟を決めて寝なければならない。
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