『俺達のグレートなキャンプ92 キャンパー達の為にカメムシ500匹を捕獲』

海山純平

第92話 キャンパー達の為にカメムシ500匹を捕獲

俺達のグレートなキャンプ92 キャンパー達の為にカメムシ500匹を捕獲しよう



「今回のグレートキャンプはこれだ!」

石川が勢いよくテントから飛び出してきた。その手には虫取り網と透明なプラスチックケース。顔はいつものように興奮で赤らんでいる。朝の清々しい空気が彼の熱量で一気に沸騰しそうだった。

「おはよう石川!今日も何か楽しそうだね!」

千葉が焚き火の前でコーヒーを啜りながら振り返る。彼の目はキラキラと輝いている。石川の企画なら何でも楽しくなると信じて疑わない表情だ。

「うん、おはよう...って、また何やらかす気?」

富山がため息混じりに顔を上げる。すでに疲れた表情。長年の付き合いで石川の行動パターンを熟知している彼女の勘が警報を鳴らしていた。

「聞いて驚け!今回のテーマは『キャンパー達の為にカメムシ500匹を捕獲しよう』だ!」

石川が両手を大きく広げて宣言する。その瞬間、周囲のキャンパー達がチラチラとこちらを見始めた。朝の静寂を破る石川の大声が、平和な朝を一変させていく。

「え?カメムシ?」

千葉が首をかしげる。コーヒーカップが宙で止まったまま。

「500匹って...なんで?」

富山の眉間にシワが寄る。不安の波が彼女の表情を覆っていく。

「考えてもみろよ!キャンプ場でキャンパーが一番困るのは虫だろ?特にカメムシなんて臭いし、テントにくっつくし最悪じゃん!だから俺達が代表してカメムシ500匹捕獲して、このキャンプ場を快適にするんだ!まさにキャンパーの為の奉仕活動!グレートじゃない?」

石川の説明に、千葉の目がますます輝く。

「おおー!それは確かにグレートだ!みんな喜ぶよ!」

一方、富山は頭を抱える。

「待ってよ...カメムシ500匹って、現実的に考えて...」

「何事も挑戦だ!富山、キミも長年のキャンパーなら分かるだろう?カメムシの迷惑さを!」

石川が富山の肩をポンポンと叩く。その勢いに富山の体が小刻みに揺れる。

隣のテントから中年男性が顔を出した。寝癖のついた髪と困惑した表情。

「あの...朝からお騒がせしますが...カメムシを500匹...?」

「あ!おはようございます!」

石川が即座に振り返り、満面の笑顔で挨拶する。

「私達、このキャンプ場の環境改善の為にカメムシ駆除を行うんです!快適なキャンプライフをお届けします!」

中年男性の表情がさらに困惑に包まれる。妻らしき女性も顔を出し、ひそひそと話し始めた。

「ねぇ、大丈夫なのかしら...」

「さあ...でも迷惑はかけないでくれるといいんだが...」

その会話が石川の耳に入る。彼の表情がさらに燃え上がった。

「よし!期待に応えなければ!千葉、富山、作戦開始だ!」

「おー!」千葉が拳を上げる。

「はぁ...」富山が深いため息をつく。

石川が手作りの作戦ボードを取り出した。段ボールに油性ペンで書かれた雑な地図とカメムシの絵。

「まず、カメムシの生息地を特定する!木の陰、湿った場所、そして...」

石川の指が地図上を踊る。千葉が身を乗り出して聞き入っている。富山は遠い目をしていた。

「石川、ちょっと待って。カメムシって本当に500匹もいるの?」

「いるさ!自然は豊かだからな!」

石川の根拠のない自信に、富山の不安はさらに募る。

「それに、捕まえたカメムシはどうするの?」

「それは...その時考えよう!」

典型的な石川の計画性のなさに、富山は額を押さえる。

「よし!それじゃあ装備チェックだ!」

石川がリュックから次々と道具を取り出す。虫取り網、プラスチックケース、軍手、懐中電灯、虫除けスプレー...

「虫除けスプレー持ってどうするんだよ」

富山が突っ込む。

「あ、これは俺達用!カメムシ以外の虫に刺されちゃ困るからな!」

その理屈に千葉が大きく頷く。富山は呆れて空を見上げた。

「さあ、出発だ!目標、カメムシ500匹!」

石川が勇ましく歩き出す。千葉が続く。富山は重い足取りでついていく。

キャンプ場の奥へ向かう途中、何組かのキャンパーとすれ違う。みんな石川達の大量の虫取り道具を見て首をかしげていた。

「あの...何をされるんですか?」

若いカップルが声をかけてきた。

「カメムシ駆除です!皆さんの為に!」

石川が胸を張って答える。カップルは顔を見合わせた。

「カメムシ...駆除...?」

「そうです!500匹捕まえます!」

千葉が補足する。カップルの表情がさらに困惑に染まった。

「あの...私達、そんなに困ってないんですが...」

女性が遠慮がちに言う。

「いやいや、遠慮しないでください!グレートなキャンプの為に!」

石川の熱意に押し切られ、カップルは苦笑いを浮かべながら去っていった。

「ねぇ、本当に大丈夫?」女性の声が遠くから聞こえる。

「さあ...でも迷惑かけなければいいんじゃない?」男性の声。

富山が振り返ると、カップルがこちらを心配そうに見ていた。

「石川...なんか、みんな困ってない気が...」

「富山!そんな弱気でどうする!困ってないのは、俺達がまだカメムシを捕まえてないからだ!きっと感謝されるぞ!」

石川の論理に、富山は言葉を失う。

森の入り口に到着した。木々が鬱蒼と茂り、確かに虫がいそうな雰囲気だった。

「よし!ここからが本番だ!」

石川が虫取り網を構える。その姿は本気そのもの。

「石川、カメムシってどうやって見つけるの?」

千葉が素朴な疑問を口にする。

「簡単だ!カメムシは葉っぱの裏や木の幹にいる!臭いニオイがするからすぐ分かるぞ!」

石川が木に近づいていく。富山は後ろで腕を組んでいた。

「あ!いた!」

石川が興奮して叫ぶ。葉っぱの裏に緑色の小さな虫。

「それ、カメムシ?」

千葉が覗き込む。

「多分...そうだと思う!」

石川が網を振りかざす。しかし、虫は素早く飛んで逃げてしまった。

「逃げた...」

「大丈夫!500匹もいるんだから、1匹2匹逃げても問題ない!」

石川の前向きさに、千葉が再び元気を取り戻す。

30分後。石川達は汗だくになっていた。虫取り網を振り回し、葉っぱをかき分け、必死にカメムシを探していた。

「成果はどう?」

富山が聞く。

「えーっと...」

石川がプラスチックケースを確認する。中には小さな虫が3匹。

「3匹...」

「3匹って...5000匹の目標に対して...」

富山が計算し始める。

「まだ時間はある!午前中だけで100匹は捕まえるぞ!」

石川の意気込みは全く衰えていない。

「石川、ちょっと現実的に考えよう?」

富山が提案する。

「富山、現実的になったら面白くないだろ?」

千葉が石川を支持する。富山は天を仰いだ。

その時、キャンプ場の管理人らしき男性が現れた。作業着を着た50代くらいの男性。困った表情を浮かべている。

「あの...皆さん、何をされてるんですか?」

管理人の登場に、3人は振り返る。

「あ!管理人さん!私達、このキャンプ場の環境改善を行っているんです!」

石川が胸を張って説明する。

「環境改善...?」

「はい!カメムシを500匹捕獲して、キャンパーの皆さんに快適に過ごしてもらおうと!」

管理人の表情が困惑から心配へと変わる。

「あの...カメムシは確かに迷惑ですが...500匹って...」

「大丈夫です!私達プロですから!」

石川の自信満々な発言に、管理人はさらに心配になる。

「プロって...あの、生態系への影響とか考えられてますか?」

突然の専門的な質問に、石川が固まる。

「生態系...?」

「カメムシも自然の一部ですから...大量に捕獲すると...」

管理人の説明に、千葉の表情も曇り始める。

「あー...そういう考え方もありますよね...」

富山がホッとした表情を見せる。ようやく現実的な意見が出てきた。

「でも!カメムシが減ればキャンパーは喜びますよ!」

石川が食い下がる。

「それは...そうかもしれませんが...」

管理人が困り果てている。その時、他のキャンパー達がゾロゾロと集まってきた。

「何の騒ぎ?」

「カメムシを500匹捕まえるって...」

「マジで?」

ひそひそ話が始まる。石川は急に注目の的になった。

「皆さん!私達がカメムシを退治して、快適なキャンプ環境を提供します!」

石川が群衆に向かって宣言する。

「いや...別にカメムシそんなに困ってないけど...」

「むしろそんなに騒がなくても...」

「生態系壊すのは良くないよ」

次々と否定的な意見が飛んでくる。石川の表情がだんだん困惑に変わっていく。

「え...でも...」

「石川、みんなそんなに困ってないみたいだよ?」

千葉が小声で囁く。

「そうね...案外、カメムシって共存できてるのかも...」

富山も付け加える。

石川が周りを見回す。集まったキャンパー達の表情は困惑、心配、そして少しの呆れ。誰も期待していない。

「あの...」

管理人が口を開く。

「お気持ちは分かるんですが...やはり自然保護の観点から...」

石川の肩がガクッと落ちる。今まで見たことがないほど落ち込んだ表情。

「そう...ですか...」

群衆がざわつく。

「可哀想...」

「でも仕方ないよね...」

「ちょっと行き過ぎだったかも...」

その時、千葉が前に出た。

「皆さん!」

千葉の大きな声に、みんなが振り返る。

「確かにカメムシ500匹は現実的じゃないかもしれません!でも、石川の気持ちは本物なんです!みんなに喜んでもらいたくて、一生懸命考えたアイデアなんです!」

千葉の熱弁に、群衆の表情が少し和らぐ。

「だから...もし良かったら...少しだけでも...」

千葉が振り返ると、石川が感動で目を潤ませていた。

「千葉...」

富山も歩み寄る。

「そうね...じゃあ、10匹くらいなら...環境に影響ない程度で...」

富山の提案に、管理人も頷く。

「それくらいなら...まあ...」

群衆からも賛同の声が上がり始める。

「10匹なら手伝うよ」

「子供も喜びそう」

「虫取り久しぶりにやってみたいかも」

石川の表情がパッと明るくなる。

「みんな...本当に...?」

「ただし!」

管理人が条件を出す。

「捕まえたカメムシは逃がしてあげること。あくまで観察だけ」

「分かりました!」

石川が力強く頷く。

「よし!目標変更だ!500匹は無理でも、せめて100匹は捕まえよう!」

石川が再び燃え上がる。管理人の心配をよそに、参加者たちも盛り上がってきた。

「おー!やってみよう!」

「子供の頃以来だなぁ」

こうして、本格的なカメムシ捕獲大作戦が始まった。

2時間後。キャンプ場のあちこちで虫取り網を持った人々が駆け回っていた。

「こっちに5匹いたぞー!」

「おお!いい成果だ!」

「あ、逃げた!」

「追いかけろー!」

まさにカメムシ捕獲祭り状態。石川の大きなプラスチックケースにはどんどんカメムシが集まってくる。

「石川、すごいことになってるね」

千葉が汗を拭きながら言う。

「ああ!みんなこんなに協力してくれて...感動だ!」

石川の目には涙が浮かんでいる。

富山も必死にカメムシを追いかけながら、

「まさか本当にこんなに集まるなんて...」

3時間後。ついに大きなプラスチックケースが満杯になった。

「数えてみよう!」

石川が興奮して叫ぶ。参加者全員が集まってくる。

「1、2、3...」

みんなで数え始める。

「95、96、97、98、99...」

「あと1匹!」

その時、千葉が最後の1匹を捕まえてきた。

「100匹達成ー!」

歓声が上がる。石川が感動で震えている。

「やった...やったぞ...100匹...」

しかし、その瞬間だった。

大量のカメムシが一斉に興奮し始めた。ケースの中で暴れまわるカメムシ達。そして...

「うわあああああ!」

石川が突然叫んだ。ケースから立ち上る強烈な臭い。100匹のカメムシが一斉に放つ防御臭。

「く、くさい...!」

千葉の顔が青ざめる。

「これは...やばい...」

富山がふらつき始める。

参加者達も次々と逃げ出していく。

「うぇ...」

「ちょっと...これは...」

「子供を遠ざけて!」

石川は必死にケースを持ちながら、意識が朦朧としてきた。

「だ、大丈夫...これくらい...」

しかし、その直後、石川の足がふらつく。

「いしかわ!」

千葉が支えようとするが、彼自身もフラフラ。

「み、みんな...逃げて...」

富山が力なく言った時、3人とも同時にバタッと倒れた。

「おい!大丈夫か!」

管理人が慌てて駆け寄る。しかし、カメムシの臭いで管理人も顔をしかめる。

「うっ...これは強烈だ...」

15分後、3人はようやく意識を取り戻した。救急車こそ呼ばれなかったものの、キャンプ場の救護室で横になっている。

「うう...頭がクラクラする...」

石川がゆっくり起き上がる。

「あの臭いは反則だよ...」

千葉も同様にふらついている。

「二度とカメムシは触りたくない...」

富山が弱々しくつぶやく。

管理人が心配そうに様子を見に来た。

「大丈夫ですか?あの後、カメムシは全部逃がしましたが...」

「すみません...迷惑おかけして...」

石川が申し訳なさそうに頭を下げる。

「いえ、でも参加者の皆さんは面白がってましたよ。『こんな体験初めて』って」

管理人の言葉に、石川の表情が少し明るくなる。

「そうですか...良かった...」

その時、富山の携帯が鳴った。着信相手は『苫谷』。

「あ、苫谷から...」

富山が電話に出る。

『富山!大丈夫?!キャンプ場から連絡があったぞ!カメムシで気絶したって本当か?!』

苫谷の大きな声が救護室に響く。

「ちょっと...その...」

『石川のやつ、また無茶なことを!代わらせろ!』

富山が震える手で石川に携帯を渡す。

「はい...石川です...」

『石川!!二度とやるか、こんなバカなこと!!』

苫谷の怒号が救護室を震わせる。石川の顔が青ざめる。

『キャンプ場の人に迷惑かけて!気絶するまでカメムシ集めてどうするんだ!!』

「すみません...でも、みんなで協力して...」

『協力も何も、結果が気絶じゃ意味ないだろ!』

石川がしゅんとする。千葉と富山も申し訳なさそうに下を向く。

しかし、その時、管理人が口を挟んだ。

「あの、苫谷さんでしょうか?管理人の田中です」

管理人が携帯を代わる。

「確かにちょっとしたアクシデントはありましたが、皆さん楽しんでくれましたよ。石川さん達の企画、とても面白かったです」

『え...そうなんですか...?』

苫谷の声のトーンが変わる。

「はい。こんなユニークなイベント、見たことないです。また来年も来てほしいくらいです」

石川の表情がパッと明るくなる。

『そう...ですか...でも気絶は...』

「それは想定外でしたが、それも含めて良い思い出になったみたいです。参加者の皆さん、写真撮って盛り上がってましたから」

管理人が笑いながら説明する。

携帯が石川に戻される。

『...石川』

「はい...」

『今度からは、もう少し安全に頼むぞ...』

苫谷の声が少し和らいでいる。

「はい...気をつけます...」

『でも...まあ...楽しかったなら...それは...良かったのかもしれん...』

石川が嬉しそうに微笑む。

『ただし!二度と気絶するようなことはするな!約束しろ!』

「はい!約束します!」

電話が終わった後、3人は安堵のため息をついた。

「苫谷さんも最終的には理解してくれたのね」

富山がホッとした表情。

「でも、確かにちょっとやり過ぎだったかも」

千葉も反省している。

「そうだな...次はもっと安全な企画にしよう」

石川も学習したようだ。

その時、管理人がまた現れた。

「あの、実は昆虫食研究家の知り合いがいるんですが...」

3人が顔を上げる。

「もしよろしければ、今回集めたカメムシの情報を送ってくれませんか?研究に役立つかもしれません」

「昆虫食研究家?」

石川が興味を示す。

「はい。大学の先生なんですが、カメムシの栄養価について研究されてて」

「カメムシって食べられるんですか?」

千葉が驚く。

「ええ。意外と栄養価が高いらしいですよ」

3人は顔を見合わせる。

「じゃあ...今回の捕獲も無駄じゃなかったってことですね」

富山がホッとした表情。

「そうですね。データとして送らせてもらいます」

石川が頷く。

こうして、カメムシ100匹捕獲大作戦は、気絶というハプニングはあったものの、最終的には研究に貢献することになった。

「楽しかったー!」

「また今度やりたい!」

「虫って意外と面白いのね」

参加者達が口々に感想を述べていく。

石川が管理人に頭を下げる。

「すみません、最初は無茶なことを...」

「いえいえ!結果的にとても良いイベントになりましたよ。参加者の皆さんも喜んでくれて」

管理人が笑顔で答える。

「また何かイベントやる時は、事前に相談してくださいね」

「はい!今度はちゃんと計画的に!」

石川が約束する。富山が苦笑いする。

夕方、テントサイトに戻った3人。

「今日は疲れたね〜」

千葉がコーヒーを淹れながら言う。

「でも楽しかった!最終的には」

富山も満足そう。

「そうだな...500匹は無理だったけど、みんなに喜んでもらえて良かった」

石川が振り返る。

「結局、何匹観察したの?」

千葉が聞く。

「えーっと...全部で23匹かな」

石川が指折り数える。

「23匹!500匹には程遠いけど、充分グレートだったよ!」

千葉が満足そうに言う。

「次回は何するの?」

富山が少し不安そうに聞く。

石川が考え込む表情。そして、パッと顔を上げた。

「『キャンパー達の為にドングリ1000個集めよう!』なんてどうかな?」

富山の顔が青ざめる。

「また数が増えてる...」

「でも今度は事前に管理人さんに相談するから大丈夫!」

石川の学習能力に、富山も少し安心する。

「それに、ドングリなら生態系に影響ないし!」

千葉が賛成する。

「確かに...ドングリ拾いなら...まあ...」

富山も渋々同意。

夜が更けて、焚き火を囲みながら3人は今日を振り返っていた。

「やっぱり、一人じゃできないことも、みんなでやれば楽しくなるんだね」

千葉がしみじみと言う。

「そうね。最初はハラハラしたけど、結果良しかな」

富山も同感。

「うん。『奇抜でグレート』も大事だけど、『みんなで楽しく』がもっと大事だということが分かったよ」

石川が心から言う。

焚き火の明かりが3人の顔を照らしている。満足そうな表情。

「さて、明日はドングリの下見でもしようか」

石川が提案する。

「もう準備開始?」

富山が呆れる。

「準備が大事だって今日学んだからね!」

石川が笑う。

「じゃあ俺も手伝うよ」

千葉が元気よく言う。

「はいはい...付き合いますよ...」

富山がため息混じりに答える。でも、その表情は嫌そうではなかった。

こうして、『俺達のグレートなキャンプ92』は、カメムシ500匹の目標は達成できなかったものの、キャンプ場のみんなで楽しい虫観察会となって大成功で終わった。

次回、『俺達のグレートなキャンプ93』では果たしてドングリ1000個集められるのか?石川の奇抜なアイデアは今度こそ成功するのか?

翌朝、石川がテントから飛び出してきた。

「おはよう!今日はドングリの下見だ!」

その手には手作りのドングリ分類表。相変わらずの準備の良さ(?)に、富山は深いため息をついた。

「また始まった...」

でも、その表情はどこか楽しそうだった。

千葉がコーヒーを持って駆け寄る。

「石川、今度はちゃんと管理人さんに相談した?」

「もちろん!昨夜のうちに話つけてある!ドングリ集めなら環境にも良いし、子供の教育にもなるって喜んでくれたぞ!」

石川の成長ぶりに、富山も安心する。

「じゃあ、今度こそ本当にグレートなキャンプになりそうね」

「うん!みんなで楽しいキャンプにしよう!」

3人が手を合わせる。朝日がその姿を温かく照らしていた。

『俺達のグレートなキャンプ』は、これからも続いていく。時には失敗し、時には成功し、でも必ずみんなで笑い合える、そんなグレートなキャンプが。


(完)

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『俺達のグレートなキャンプ92 キャンパー達の為にカメムシ500匹を捕獲』 海山純平 @umiyama117

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