ああ、この方は言葉を巧みに使うなあ、と初めに見たときは感心しました。短歌はわずか三十一字で表現する作品群です。三十一字は時として何も工夫をせず、そのまま羅列するだけでは起伏のない言葉の塊になってしまいます。しかし、この作品群を覗いた時に私は、その言葉の飛距離と鮮烈さに驚きを隠せませんでした。
言葉の飛距離とは、「この言葉とその言葉を繋ぐのか」という意外性とそこから生まれるシナジーと私は解釈しています。詳しく作品で説明すると、【しゃっくりが〜】の短歌は、しゃっくりという言葉から、さそり座への想像力の飛距の大きさ。なんとどこまでも飛んでいくのだろう、と思ってしまいました。また【そういえば〜】の一首は”島国””突きぬけ””長野”という言葉、その組み合わせが絶妙。巧みな言葉使いだと私は考えます。
そして鮮烈さは、見ているだけで言葉がパッケージング化されているような強烈な印象を与える言葉のことだと私は解釈しているのですが、これが本当にうまい。【いつからかズレ始めてた縫い目ほど無視をしていた ドンキの巫女服】【今週は乙女座最下位だったから虹をみつける旅支度する】【早熟な子供はみんな カップ麺3分待たずに食べるみたいな】【はやければいいってもんでもないでしょう かけっこにだって美学があって】すみません、思わず作品を羅列してしまいましたが、本当にどれも素晴らしい。針金ハンガー3個セットさんは標語のような言葉を作られるのが上手だなと思います。
これからも作品を作り続けてください。応援しています。