スーパーに魂を売った男

欠陥品の磨き石 磨奇 未知

スーパーに魂を売った男

僕は今 ある目的を遂行するため

スーパーの一角にいる。

僕は小刻みに正確に動く腕時計を眺めながら

「あと1分37秒後

奴がくる…」

僕は額に汗を流しながら息を呑んだ。


ここのスーパーは8時になると割引が始まる。

毎週金曜日は金髪の耳にたくさんのピアスを開けた島田というバイトが割引を行っている。

島田君は毎週金曜日この時間にだけ現れて

商品もよくみずにいい加減に割引シールを貼る。

ここのスーパーは他のスーパーに比べて

割高で割引額もしょぼいが、

島田君が割引する日だけ他の店舗より

ほんの少しだけ安くなる。


僕はそれを狙って毎週金曜日だけこのスーパーに訪れる。

家から1時間もかけて向かうのはこれが理由だ。


僕は1番値段に対して質量が大きかった菓子パンを戸棚の奥に隠しながら島田君が現れるのを待っている。

その時、

島田君が割引シールを片手に関係者用のドアから現れる。

島田君はあくびをしながら商品をみずに次々と割引シールを貼っていく。

僕は島田君の背後に周りピッタリと密着しながら、島田君が割引した中で質量と値段の効率がいい商品を

味とか食材とか気にせずに次々とカゴに運んでいく。


割引を狙っていた主婦やサラリーマンが悔しそうにこちらを眺めていた。

僕は優越感に浸りながら次の目的に移る。

島田君が先ほど僕が菓子パンを隠した戸棚に近づく。

僕は先周りをし、

慣れた手つきで菓子パンを手前に移動させて、

島田君の身長に合わせた位置に移動し、LEDライトの灯りがパンに上手く当たるように細かく調整を行い菓子パンの配置を完了させる。


天井を眺めながらどこかめんどくさそうな顔をしながら島田君は戸棚に手を掛けた。

「惣菜は全部今日で期限切れるんだよな〜」

島田君はそう呟きながら全ての惣菜に割引シールを貼ってゆく。

その時

島田君が光り輝く菓子パンを発見する。

「こんな場所に菓子パンなんか置いてたっけ?

元の場所に戻すのめんどいし割引しとくか。」

島田君は鼻をほじりながら惣菜に使っていた

半額の割引シールを菓子パンに貼る。


僕はすかさず菓子パンを手に取った。

「作戦成功だ。

惣菜コーナーの一角に忍ばせることで確実に半額を誘うことができる。

島田君は惣菜コーナーのものには必ず半額シールを貼る。

島田君が菓子パンに気づきわざわざ手に持っている半額シールではなく菓子パン用の3割引シールを探して貼るなんで行為絶対しないからな。

さらに惣菜コーナーから菓子パンコーナーは真反対。

わざわざ島田君が菓子パンコーナーまでパンを戻しにいく可能性も考えられない。

まさしく作戦勝ちだ。」

僕は菓子パンをカゴに入れ

一目散にレジに向かった。

目当ての商品が手に入らなくて泣いてる子供

少し寂しそうな顔でこちらを眺める老人夫婦

舌打ちをしながら顰めっ面でこちらを眺める主婦


自業自得なのになぜそうも被害者ヅラができるのか…

僕はレジの会計をしながら

考えていたが僕には到底あの人達の行動が理解できなかった。


スーパーを後にした僕は急いで時計を確認した。

時計は嫌味のように正確に秒針を進める。

「今日はいつもより3分32秒オーバーだな。

また命を無駄にした…」

僕はそう呟きながら一人

スーパーという名の戦場を後にした。

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