吸血鬼が裏社会を築く架空の日本を舞台に、吸血鬼の頭領と鬼狩りの娘が結婚する――という魅力的な設定が、美しい時代感あふれる文章で描かれている名作です。
血魅(吸血鬼)社会の描写が丁寧で世界観に惹き込まれました。彼らの一人称視点で語られる常識は、人間の読者には受け入れがたいものばかりですが、安易な共存を書かず、血魅という存在の異質さを徹底している姿勢にこだわりを感じます。
恋愛要素も一筋縄ではなく、親の仇と花嫁という複雑な関係だからこそ、互いの想いを確かめきれないまま進んでいく。その張り詰めた距離感が、物語全体に唯一無二の魅力を与えていました。