第12話
「金曜と日曜しか休みないくせに」
みっちゃんの声は、いつも通り淡々としてるのに、
その言葉が胸に静かに刺さった。
図星だった。
休みが少ないことを責められてるわけじゃないって、みっちゃんの声のトーンで分かる。
ただ、心配してるだけ。
それが、少しだけ嬉しくて、でも同時に、
“そんなふうに思われる自分”が、どこかで情けなくも感じる。
「まぁ、社会人体験みたいな?」
軽く返したつもりだった。
本音を隠すための、いつもの言い回し。
ほんとは、社会人体験なんて言葉じゃ片付けられないくらい、いろんな思いが詰まってる。
焦りとか、孤独とか、誰かに認められたい気持ちとか。
でも、みっちゃんの前では、その必死さを見せたくなくて、つい軽口を叩いてしまう。
それが、少しだけ苦しい。
「嫌でも働かないといけないのに、学生の間ぐらい遊んでもいいだろ」
その言葉に、胸の奥がじんわりと熱を持った。
“今しかない時間を大事にしろ”って、そう言ってくれてる気がした。
でも、私はその“今”をどう過ごせばいいのか、まだよく分かっていない。
遊ぶことに罪悪感を覚えるくらいには、私は何かに追われてる。
将来とか、期待とか、自分自身の不安とか。
みっちゃんの言葉は優しいのに、それを素直に受け取れない自分が嫌いだ。
「暇が嫌いなだけだよ」
動いてる方が、ずっと楽。
動いてる方が、自分を保てる。
「なんでもいいけど。あ、居酒屋まで送ってこうか?」
私は首を横に振る。
「もう、子供じゃないんだから大丈夫だよ」
そう言った瞬間、みっちゃんが少しだけ笑った。
“子供じゃない”って言葉は、自分を守るための盾みたいなもの。
でも、みっちゃんの前では、その盾がすぐに揺らいでしまう。
彼の目は、いつも真っ直ぐで、私の嘘をすぐに見抜いてしまうから。
「子供だろ」
子供って言われるのは、悔しいようで、でもどこか安心する。
みっちゃんが私を守ろうとしてくれてるって、その言葉から伝わってくる。
でも、私はそれを素直に受け取れない。
強がりが、邪魔をする。
「過保護なだけでしょ」
みっちゃんの過保護さは、私にとって、ちゃんと見てくれてるって証でもある。
でもそれを認めてしまうと、自分が弱くなってしまう気がして、つい反発してしまう。
「心配なだけ」
みっちゃんの声は、いつもより少しだけ静かだった。
その静けさが、私の中の何かをそっと揺らした。
私はその優しさに、どう返せばいいのかわからなかった。
だから、笑ってごまかすしかなかった。
「はいはい、ありがとう。じゃあね」
そう言って背を向けたけど、歩き出した足は、少しだけ重かった。
みっちゃんの視線が、背中に刺さるような気がして、振り返りたくなるのを、ぐっと堪えた。
初恋はまさかのイケおじ!?恋に年齢制限なんて、あるわけない! @hayama_25
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