第60話(おまけ回):温泉で急接近!? 仲間以上の感情

カイヴァー・ドレークとの激闘を終え、聖域を後にした俺たちは、惑星アストラへ帰還する途中、旅の疲れを癒すため、とある火山惑星に立ち寄っていた。この星は、星全体が活火山地帯というとんでもない場所だが、そのおかげで、宇宙でも有数の、極上の天然温泉が湧き出ることで、一部の好事家こうずかの間では有名なのだ。


そして今、俺たちは、貸し切りにした、巨大な露天風呂にいた。岩と美しい緑に囲まれ、乳白色の湯けむりが立ち上るその光景は、前世の日本の温泉旅館を彷彿ほうふつとさせる。空にはオーロラのように揺らめく星雲が見え、まさに絶景だ。


「うわーい! 気持ちいいー! 広ーい!」


アステラが、子供のようにはしゃぎながら、広い湯船をばしゃばしゃと泳ぎ回っている。激戦の疲れも吹き飛んだのか、その笑顔は太陽のように眩しい。普段の装束とは違う、その無防備な姿に、俺は目のやり場に困ってしまう。


「ねえユウト、こっちこっち! 背中、流してあげるね!」


そう言うと、アステラは、何のてらいもなく、俺の背中にぴたりと体を寄せてきた。激しい戦いを経て、よりしなやかに引き締まった、しかし驚くほど柔らかな感触が、背中に伝わってくる。


「お、おい、アステラ……! 子供じゃないんだから、そんなにくっつかなくても……」

「えー? ダメ? ユウトがいたから、私、頑張れたんだよ。だから、これはお礼!」


まったく、この天然さと素直さには敵わない。俺が狼狽ろうばいしていると、その様子を見ていたリーベが、艶然えんぜんと微笑みながら、俺の隣に、そっと体を寄せてきた。彼女の濡れた緑の髪が、俺の肩にかかる。その甘い吐息が、耳をくすぐった。


「ユウト先生、のぼせてしまいましたか? お顔が、まるでこの星の溶岩のように、真っ赤ですよ」

「こ、これは、その……湯あたりだ! そう、湯あたりに違いない!」

「ふふっ、でしたら、私がもっと効果的な疲労回復法を教えて差し上げます。こうして、体を密着させることで、互いの魔力循環を活性化させ、リラックス効果を高めるのです。これも、貴重な生体データの収集ですから」


知的な口実で、さらに距離を詰めてくるリーベ。その豊満ほうまんな胸が、腕に押し付けられる。理性が、警報を鳴らし始めた。


「しょうがねえな、ボスは。少し頭を冷やしてやるよ」


そんな俺たちの様子を見かねたのか、湯船の隅で一人、腕を組んで距離を取っていたオリビアが、やれやれといった風に、こちらにやってきた。そして、俺の頭に、桶で、キンキンに冷えた水を、ざばーっとかけた。


「つめてっ! おい、オリビア、てめえ!」

「へへっ、いい湯加減になったろ? お前がのぼせたら、この先の航路の指揮は誰がとるんだよ」


悪戯っぽく笑うオリビア。だが、その瞳の奥には、確かな気遣いが滲んでいる。俺が反撃しようと腕を掴むと、彼女は「ば、馬鹿! やめろ!」と、意外なほどあっさりと顔を赤くした。


そんな俺たちの騒ぎを、少し離れた場所で、カリスタが、顔を真っ赤にしながら、見ていた。


「べ、別に、羨ましくなんて、ありませんからね! わたくしは、一人で、優雅に温泉を楽しんでいるだけですわ! この喧騒、下品ですのよ!」


彼女は、そう言って、ぷいっとそっぽを向く。だが、その時、彼女が座っていた岩の表面が、温泉の成分で滑りやすくなっていたのだろう。


「きゃあっ!?」


カリスタが、可愛らしい悲鳴を上げて、バランスを崩し、俺の方へと、倒れ込んできた。


俺は、咄嗟に、その体を、抱きとめる。


結果、俺は、四人の美しい少女たちに、四方から、完全に、密着される形となった。


右にアステラの太陽のような温もり、左にリーベの知的な色香、正面にはオリビアの野性的な熱気、そして、腕の中には、涙目で「あ、あなたのせいよ!」と顔を真っ赤にして俺の胸を叩く、誇り高き姫君、カリスタ。


まさに、四面楚歌。いや、四方天国。


「(これはもしかして、最高のハーレム生活が始まるのでは…?)」


俺の内心の期待は、膨らむばかりだ。


「……まったく、騒がしいお姫様だ」


俺がカリスタを抱きかかえたままそう言うと、彼女は「なっ……!?」とさらに顔を赤くして黙り込んでしまった。


「ユウトは、本当に私たちのことが好きだね」


アステラが、全てを見透かしたように、くすりと笑う。


そうだ。俺はこの、かけがえのない、騒がしくて愛おしい日常を、何よりも大切に思っている。


俺は、腕の中のカリスタをそっと岩場に座らせてやると、四人の顔を改めて見渡した。


「ああ、好きだ。大好きだ。お前たちといるこの時間が、俺にとって最高の宝物だよ」


俺の素直な言葉に、四人は一瞬きょとんとした後、全員が、これまでで一番幸せそうな、そして、少しだけ照れたような、極上の笑顔を、見せてくれた。


その直後、俺の鼻から、一筋の赤い血が、たらりと流れたのは、言うまでもない。


俺の、平穏とはほど遠い、しかし、最高に幸せな休日は、これからも、まだまだ、続いていくのだった。

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元社畜の俺、転生チートの『解析スキル』で美少女クルーを率いたら『宇宙最強の指揮官』になっていた――星詠みの最強指揮官 AKINA @AKINA-SE

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