第56話:勝利! そして、ヒロインたちからの怒涛の想い!

虹色の光が、ゆっくりと収まっていく。


カイヴァー・ドレークという、宇宙を蝕む巨大な悪意が浄化され、後には、ただ静寂だけが残された。荒れ狂っていた魔力の嵐は完全に消え去り、赤茶けた大地には、まるで何もなかったかのように、穏やかな風が吹いている。


俺の右腕に装着されていた『魂格ソウル・フレーム』が、キーンという甲高い警告音と共に、灼熱しゃくねつを発した。


「ぐっ……!?」


オーバーヒートだ。俺の脳の処理能力に、聖域のシステムがついてこれなくなったらしい。


魂格ソウル・フレームは、その役目を終えたと判断したのか、自ら俺の腕から分離すると、光の粒子となって、神殿の祭壇へと転送されていく。


聖域の演算能力との直結が解除されると同時に、凄まじい疲労感が、津波のように俺の全身を襲った。


激闘の中で極限まで高められていた精神力が、ぷつりと、糸が切れるように途切れる。


「……終わった、のか……」


俺は、その場に崩れ落ちそうになる体を、なんとか堪える。


視界が、ぐらりと揺れた。


仲間たちが、俺の名を呼びながら、駆け寄ってくるのが見えた。


アステラの、泣きそうな顔。


オリビアの、必死な形相。


リーベの、心配そうな眼差し。


カリスタの、青ざめた表情。


「(ああ、みんな、無事だったんだな……。よかった……)」


その安堵感が、俺の意識を保っていた、最後のくさびだった。


俺の体は、ゆっくりと、後ろに倒れていく。


最後に聞こえたのは、俺の名を呼ぶ、彼女たちの、絶叫にも似た声だった。


……どれくらい、意識を失っていただろうか。


次に俺が目を覚ました時、最初に感じたのは、柔らかなベッドの感触と、誰かが俺の手を、優しく握りしめている感覚だった。


目を開けると、そこはシューティングスター号の、俺の自室だった。


そして、ベッドの周りには、四人の少女たちが、心配そうな顔で、俺を覗き込んでいた。


「ユウト! 目が覚めたんだね! よかった……!」


最初に俺の手を握っていたアステラが、涙でぐしゃぐしゃの顔で、しかし、満面の笑みを浮かべて、俺の胸に飛び込んできた。


「本当に、心配したんだから……! もう、目覚めないんじゃないかって……! ユウトがいなくなったら、私……!」


彼女は、言葉にならない想いを、ただ、俺を強く抱きしめることで、伝えてくる。その体は、小刻みに震えていた。俺は、そんな彼女の背中を、優しく撫でてやる。


「……へっ、やっとお目覚めかい、ボス。人騒がせな野郎だぜ、まったく」


オリビアが、ぶっきらぼうに、しかし、その声は安堵に震えている。彼女は、俺の顔を見ると、ふいっとそっぽを向いて、目元を乱暴に拭った。


「……アタシは、アンタを、ボスだと認めた。だから……だから、勝手にいなくなったりしたら、絶対に、許さねえからな……!」


それは、彼女なりの、不器用で、しかし、どこまでも真っ直ぐな、想いの告白だった。


「ユウト先生。ご無事で、本当によかったです」


リーベが、その美しい顔に、心からの笑みを浮かべて、俺の手を、そっと握りしめてくる。


「私、わかったんです。私が本当に研究したいのは、魔導工学の真理だけじゃない。あなたという、未知の存在そのものなのだと。だから、これからも、ずっと、あなたのそばで、あなたを研究させてくださいね」


それは、知的で、しかし、どこまでも熱烈な、彼女からの愛の言葉だった。


そして、最後に、カリスタが、顔を真っ赤にしながら、もじもじと、俺の前に進み出た。


「ゆ、ユウト……! わ、わたくしは……!」


彼女は、深呼吸を一つすると、意を決したように、叫んだ。


「わたくしは、あなたのことが、す、す、好きですわ! 仲間としてではありません! 一人の男として! あなたのその、傲慢で、自分勝手で、でも、誰よりも仲間を大切にする、その生き様に、わたくしは、惹かれてしまったのです!」


そのあまりにもストレートな告白に、俺も、他の三人も、呆気に取られる。


「だから! これからも、あなたの隣に、いさせてくださいませ! そして……いつか、アステラにも、他の女狐たちにも勝って、あなたの、一番になってみせますわ!」


最高の勝利と、最高の仲間たち。


そして、彼女たちからの、怒涛の想い。


俺は、四人の美しい少女たちに囲まれながら、感無量かんむりょうで、ただ、天を仰ぐことしかできなかった。


社畜として死んだ俺が、手に入れたのは、チート能力なんかじゃない。


この、かけがえのない、宝物のような、毎日だったのだ。

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