第52話:ついにラスボスと対峙。「お前ごときが、俺たちの時間を邪魔するな」

シューティングスター号は、赤茶けた大気の層を突き抜け、惑星『ノヴァ』の地表へと降下していく。窓の外に広がるのは、生命の気配が一切感じられない、荒涼こうりょうとした大地。ヒューヒューと鳴る乾いた風が、赤い砂を舞い上げ、船の装甲に当たってパラパラと虚しい音を立てる。乾いた風が、赤い砂を巻き上げ、空は常に薄暗い夕焼けのような色に染まっている。かつては緑豊かだったのかもしれないこの星も、今や、聖域を守るためだけに存在する、巨大な墓標のようだった。


「ライブラ、カイヴァー・ドレークの正確な位置は?」

『第一神殿前、座標を転送します。……ユウト様、お気をつけください。彼の魔力反応、先ほどよりも、さらに増大しています』


ライブラの警告を背に、俺たちは神殿がそびえ立つ渓谷へと、船を進める。


やがて、視界が開け、巨大な神殿の威容が姿を現した。それは、自然の岩山を、そのままくり抜いて造られたかのような、荘厳そうごんで、しかしどこか異質な建造物だった。


その神殿の入り口、巨大なゲートの前に、一つの人影があった。


禍々まがまがしい漆黒の戦闘用魔装具に身を包み、ゲートに手をかざしている。間違いなく、カイヴァー・ドレークだ。彼は、ゲートに施された古代の封印を、力ずくでハッキングしようとしているのだ。


「見つけたぞ、カイヴァー・ドレーク!」


俺たちは船から飛び出し、奴の前に立ちはだかる。


カイヴァー・ドレークは、ゆっくりとこちらに振り返った。その兜の隙間から覗く瞳が、俺たちを、まるで取るに足らない虫けらのように見下している。


「ほう。まだ生きていたか、聖域のネズミどもよ。わざわざ、この私に引導を渡されに来るとは、殊勝な心がけだ」

「その減らず口、いつまで叩けるかな!」


アステラが叫び、光の槍を放つ。


だが、その一撃は、カイヴァー・ドレークに届く前に、不可視の壁に阻まれ、霧散した。


「無駄だ」


彼は、せせら笑う。


「この古代の魔装具『アビス・アーマー』の前では、貴様らの攻撃など、児戯じぎに等しい」


彼の全身を覆う鎧は、ただの防御具ではなかった。空を自在に飛翔させ、小型の魔導炉によって、あらゆる属性の魔法を、魔力溜めもなしに、瞬時に発動させることができる、まさに一人で戦況を覆す、究極の戦闘兵器。


俺は、《解析瞳》で、その鎧の構造を解析しようと試みる。


だが、脳内に流れ込んできたのは、意味をなさないノイズの嵐だった。


「(ダメだ! 強力な魔力ジャミングが施されている! 解析できない!)」


「さあ、始めようか。宇宙の真理に至る、最後の儀式を」


カイヴァー・ドレークは、両手を広げ、恍惚とした表情で天を仰いだ。


「私こそが、この歪んだ宇宙を正し、真の調和をもたらす、唯一無二の存在! 私こそが、この宇宙の、真の支配者なのだ!」


その狂気に満ちた演説に、俺は、心底うんざりしたように、言い放った。


「どうでもいい。お前の自己満足のせいで、俺たちの予定が、めちゃくちゃになったんだ。その責任、きっちり取ってもらうぞ」


俺の言葉に、カイヴァー・ドレークの顔が、怒りに歪む。


「どこまでも、小賢しい口を叩く……! よかろう! 貴様らには、真の絶望を与えた上で、この宇宙の礎となってもらおう!」


最終決戦の火蓋が、今、切って落とされた。


この荒涼とした大地で、二つの相容れない「正義」が、激突する。

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