第22話:偽りの船、分断された仲間たち
コンテナ船のエアロックは、幸いにも外部からの操作で開いた。俺たち四人は、魔装具のヘルメットを装着し、静まり返った船内へと、第一歩を踏み出す。
内部は、不気味なほどに静かだった。非常灯だけが、長い通路を青白く照らし出し、俺たちの足音だけが、金属の床に虚しく響き渡る。無重力状態のため、空気中に漂う微細な塵が、ライトの光を浴びて、きらきらと舞っていた。
「……気味が悪いですわね。本当に、誰もいないのかしら」
カリスタが、不安げに声を潜める。
俺たちは、武器を構え、警戒しながら、船の中枢区画へと進んでいった。この船の航行記録や積荷のデータが眠っているであろう、ブリッジを目指して。
いくつかの区画を通り抜けた、その時だった。
俺たちが、船の中央に位置する、巨大なジャンクションエリアに足を踏み入れた瞬間、それまで沈黙を保っていた船が、突如として、その牙を剥いた。
ギュオオオオオン!
甲高い警報音が鳴り響き、壁や天井に埋め込まれていた赤い魔石が、激しく点滅を始める。
「なっ、なんだ!?」
オリビアが叫ぶ。
次の瞬間、俺たちの前後左右の通路から、分厚い
「罠か!」
俺は咄嗟に叫んだ。
障壁が完全に閉鎖される、その寸前。
アステラとオリビアが、先行していた通路の向こう側へ。
そして、俺とカリスタが、こちら側に取り残される形となった。
分厚い障壁が、俺たちの目の前で完全に閉鎖され、仲間たちの姿を、無慈悲に遮断する。
「アステラ! オリビア!」
俺が叫ぶが、返事はない。
「そ、そんな……! どうするのですか、ユウト!」
カリスタが、狼狽したように声を上げる。
絶体絶命の状況。だが、俺の頭は、驚くほど冷静だった。
俺は、すぐに魔導思念通信機に意識を集中させる。これなら、物理的な障壁を越えて、仲間たちと意思疎通ができるはずだ。
「(アステラ、オリビア、聞こえるか! 無事か!?)」
一瞬の沈黙の後、脳内に、二人の声が響いてきた。
「(ユウト! 大丈夫だ! こっちは、アステラと一緒だ!)」
「(ユウトの声! よかった……! 私も、無事だよ!)」
二人の無事を確認し、俺は安堵のため息をつく。
そして、即座に、次の指示を出す。
「(いいか、全員、落ち着いて聞け。これは、敵の罠だ。だが、慌てる必要はない。この船のシステムを完全に掌握すれば、この状況は覆せる。最終的な合流目標は、船のブリッジだ。それぞれのルートで、ブリッジを目指せ。道中で何か異常があれば、すぐに報告しろ。リーベ、聞こえるか?)」
「(はい、ユウト先生! こちらはいつでも、シューティングスター号を動かせます!)」
俺の冷静な指示に、パニックに陥りかけていた仲間たちの間に、落ち着きが戻っていく。
だが、一人だけ、俺の隣にいるカリスタだけは、違った。
彼女は、俺の顔を、信じられないものを見るかのような目で、じっと見つめていた。
「(この人……。この、絶望的な状況で、なぜ、これほど冷静でいられるの……?)」
彼女が、俺の模擬戦での指揮能力を、ただの机上の空論ではなかったと、その身をもって理解した瞬間だった。
彼女の心の中に、俺という存在に対する、畏怖と、そして、これまでとは全く質の違う、新たな感情が芽生え始めていたことを、俺はまだ、知らなかった。
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