第20話:「君の力が必要だ」意外な言葉に、ツンデレの心が揺れる
「この私に、頭を下げて、土下座をして頼むというのなら、協力して差し上げても、よろしくてよ?」
カリスタの勝ち誇った言葉が、静かな応接間に響き渡る。その瞳は、先日の雪辱を果たす機会を得て、愉悦にきらめいていた。オリビアが「てめえ……」と低い声で唸り、一触即発の空気が流れる。
だが、俺は動じなかった。
ゆっくりと立ち上がり、カリスタの前に進み出る。そして、深々と、しかし騎士が王に礼を尽くすかのように、優雅に頭を下げた。
「無論です、カリスタ嬢。我々は、ロゼッタ王家が誇る最高の魔法剣士である貴女に、心からの敬意を表し、正式に助力をお願いするために参りました」
俺の予想外の、しかし完璧な礼法に基づいた対応に、カリスタは一瞬、虚を突かれたように言葉を失う。彼女が期待していたのは、俺が悔しさに顔を歪めながら、不格好に頭を下げる姿だったのだろう。
俺は、ゆっくりと顔を上げ、彼女の碧い瞳をまっすぐに見つめて、続けた。
「これは、ただの依頼じゃない。俺個人の頼みでもない。聖域の封印を解くことは、おそらく、この宇宙全体の運命に関わってくる。そして、その大役を担えるのは、この銀河広しといえど、ただ一人。君だけだ」
俺は、そこで一度言葉を切った。
そして、この交渉を終わらせるための、最後の一手を打つ。
「俺たちは、君の『魔法』が必要なんじゃない。君の『力』が必要なんだ」
その言葉は、彼女の心の最も柔らかい部分を、正確に貫いたようだった。
カリスタの肩が、微かに震えたのを、俺は見逃さなかった。扇で隠された口元が、固く結ばれている。彼女が必死に築き上げてきたプライドという名の鎧に、初めて、亀裂が入った瞬間だった。「君の力が必要だ」。それは、彼女を打ち負かした俺が、彼女の存在そのものを、その唯一性を、完全に認めた瞬間だった。
カリスタの白い頬が、みるみるうちに赤く染まっていく。その瞳は激しく揺れ動き、扇で隠した口元からは、言葉にならない声が漏れていた。
プライドが邪魔をして、素直に頷くことができない。だが、断る理由も、もう見つからない。これぞ、ツンデレの葛藤というやつだ。
やがて、彼女は咳払いを一つすると、必死に平静を装いながら、そっぽを向いて言った。
「べ、別に、あなたのために協力して差し上げるわけではありませんわ! この宇宙の平和のため、そして、この私自身の見聞を広めるため……そ、そう、あくまで私自身のために、仕方なく、同行して差し上げますわ!」
「やったー! これでみんな仲間だね!」
アステラが、満面の笑みで拍手する。
「やれやれ、面倒なのが一匹増えたね」
オリビアが、やれやれと首を振る。
「論理的な判断です。これで、我々の任務成功率は飛躍的に向上しました」
リーベが、冷静に分析する。
こうして、俺たちのパーティに、四人目のヒロイン(予定)が加わった。
屋敷を出て、シューティングスター号が停泊する宇宙港へと向かう。
俺たちの愛機を見たカリスタは、眉をひそめて露骨に嫌な顔をした。
「……なんですの、この鉄屑は。わたくし、このようなオンボロ船に乗れと?」
「文句があるなら歩いて行け。こいつは俺たちの大事な船だ」
俺がそう言うと、カリスタは「不敬ですわ!」と叫びながらも、しぶしぶとタラップを上がる。その姿は、もはやただの可愛らしいツンデレお嬢様だった。
シューティングスター号は、新たな仲間を乗せて、惑星ロゼッタの空へと舞い上がる。
コクピットの副操縦士席で、俺は静かに笑みを浮かべた。
俺のパーティは、ますます強力に、そして、ますます騒がしくなっていく。
平穏なニート生活は、銀河の彼方へと遠ざかっていくようだ。だが、この予測不能な毎日が、今は何よりも愛おしい。
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