第16話:「ユウトの声が、星のささやきみたいに聞こえた……」戦闘後の甘々タイム

ハッチが閉まり、船内に空気が満たされる。


魔装備を解除したアステラは、ふらりとよろめき、その場に倒れ込みそうになった。俺は慌てて駆け寄り、その華奢な体を抱きとめる。


「アステラ!」


腕の中に収まった彼女の体は、魔力を使い果たしたためか、少しだけ熱を帯びていた。


顔を覗き込むと、疲労の色は濃いものの、その赤い瞳は満足げに細められている。さっきまで宇宙を滅ぼすほどの力を見せていた少女が、今はこうして、か弱く、俺に全てを預けている。そのギャップに、俺は柄にもなく、守ってやらなければという強い想いを抱いた。


「……ユウト」

「無茶しやがって。だが、見事だったぞ」

「ううん。ユウトがいたから勝てたんだよ。ユウトの声が、星のささやきみたいに、私を導いてくれたから……」


そう言うと、アステラは安心しきったように、俺の胸にぐりぐりと頭を擦り付けてくる。その仕草は、飼い主に褒められたい子犬のようで、あまりにも愛らしかった。俺は、そんな彼女の銀髪を優しく撫でてやる。


「……まったく、見せつけてくれるじゃないか」

「ええ、本当に。私たちも、もう少し頑張らないといけませんね」


オリビアとリーベが、少し離れた場所から、やれやれといった表情で、しかし微笑ましそうに俺たちを見守っていた。


しばらくアステラの頭を撫でてやっていると、彼女はふと何かを思い出したように顔を上げた。


「あ、そうだ! ユウト、これ!」


そう言って彼女が差し出したのは、先ほど敵の残骸から回収した、青白く明滅する魔石だった。


「これが、奴らの核か……」


俺はそれを受け取り、《解析瞳》で内部構造をスキャンする。


すると、脳内に驚くべき情報が流れ込んできた。


【聖域防衛用ゴーレム・コア】

種別: 古代文明製・自律型魔導兵器

機能: 聖域に近づく未登録の存在を自動的に排除する。

内部記録媒体ストレージ: 聖域に関する情報(座標、及び防御システム概要)を内蔵。特殊な護封魔法プロテクトにより封印状態。


「(ゴーレム……? あの宇宙生物、ただの化け物じゃなくて、人工物だったのか。しかも、聖域の……)」


「どうしたんだい、ユウト? 何かわかったのか?」

「ああ。こいつはただの魔石じゃない。古代文明の情報保存装置だ。聖域の場所と、その防衛システムに関する情報が記録されているらしい」


俺の言葉に、リーベの目がカッと見開かれた。


「情報保存装置ですって!? それ、本当ですか!?」

「ああ。だが、強力な護封魔法がかかってる。俺の《解析瞳》でも、中身を直接読み取るのは無理そうだ」

「でしたら、私の出番ですね!」


リーベは、まるで宝物を前にした子供のように目を輝かせると、自室から解析用の機材を運び出してきた。彼女はデータチップを慎重に装置にセットし、コンソールを猛烈な勢いで叩き始める。その指さばきは、まるでピアノを奏でる名演奏家のようだった。


数分後、リーベが「……やりました!」と歓声を上げた。


魔導水晶盤クリスタルパネルに、解析されたデータが映し出される。そこに記されていたのは、複雑な幾何学模様で描かれた星図と、古代の文字で書かれた膨大な量のテキストデータだった。


「これは……! 間違いありません、遺失された鋼鉄の聖域の座標です! それに、この記述……聖域の封印を解くには、特殊な魔力パターンを持つ鍵が必要……?」


リーベが興奮気味に報告する。


俺は、水晶盤に表示された魔力パターンの図形に、見覚えがあることに気づいた。


「(このパターン……どこかで……)」


《解析瞳》が、俺の記憶の書庫を高速で検索する。


そして、一つの答えを弾き出した。


ルクスのギルドで見た、あの金髪お嬢様――カリスタが放とうとしていた、切り札の魔法。


『破邪の聖炎』。


その発動パターンと、水晶盤に映る鍵のパターンが、寸分の狂いもなく一致していた。


「(マジかよ……)」


俺は、思わず天を仰いだ。


どうやら、あの最高に面倒くさいツンデレお嬢様と、再び顔を合わせなければならないらしい。


俺の平穏なスローライフは、一体どこへ行ってしまったのだろうか。

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