track

いくつもの列車を見送った

踏切の真ん中に立ち

遠ざかる音を観ていた


観ることは窓の外から覗くことね

硝子の向こう側には

商人や旅人や、実家へ帰省する親子が

笑っているのに

私はそこにいない


平行に続く線路が

やがて点になる処には

愛や恋、喜びと悲しみが

ひしめき合っている


ここに立ち竦む私を、かれらはすぐに忘れるから

私もこの線路の果てへ、戻っていこう

果てのまたその先には、過去と未来と今の私が

もうひとつの果てを指し、佇んでいる

在ることの痛みと

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