海に行けなくても、君がいれば

りな

第1話 朝の海をみたい

朝の教室キミとの会話


「朝の海をみたい」


私は言葉を続ける。


「その……朝日が昇っていく海を。海の色って空の色を反射してるんだって信じられる?きっと朝焼けの海はきれいだよ」


キミの方を見る。


「確かに。見てみたいな」

「今年は無理だよねー」

「そうだよな。海は遠いし、時間もない」

「YouTubeで探してみようかな?……でもネタバレになっちゃうか……」

「やめとけ、俺もやめとくよ」

「……一緒に行くつもり?」

「そのつもりだったけど、違うの?」


キミは口元を緩めて、いつもの様に軽く柔らかく話す。当たり前に言うけれど、目を合わせないように視線は筆箱に向ける。

来年はどこで何してるのか、まだ何の保証もない二人。簡単に約束をしていいか迷うよ。


「日の入りの時刻とか、方角とか、関係ある?どう思う?」

「えーわかんない。……もう学校のプールでいっか?」

「いっきに手近になったな。全然違うだろ?」

「なははははー」 


もうすぐチャイムが鳴る。いつもの日常が始まる。この教室が終わったらどこで会えるかなと、自分の席へと向かっていくキミを目で追いながら、筆箱に手をかける。

『全然違うだろ?』キミの声が耳に残る。

……でも、次の試験はいつだっけ。



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