ワタクシ的、甲子園における、高校野球の楽しみかた

露氷六子

つらつらと "甲子園" の楽しみかたを熱弁する

◌ 景色を楽しむ

乾いた薄茶色の砂に、緑と白の斜めストライプ、真っすぐに引かれた白線の粒、乱れ穿うがつ力強い足跡、整えられたばかりの透明な砂地、深緑色の360度に大きく広がる観客席の光と影、頭上にそびえるときめくバックスクリーンと、はためくシンボル、青空と白い雲、時々通り雨、ダイヤモンドを見下ろすヘリコプターの流れる音。


◌ 空気を楽しむ

たくさんの人達の心地の良いざわめき。

打ったときのキャーッて声、捕られた時のああって残念なさざめき、頑張ったときの励ますような優しい拍手の重なり、たまに真剣すぎて反響してるおじさんのよく通るヤジの声。


○ 選手を楽しむ

凛々しい眼差し、笑う白い歯、ミスったときのヤバッて目線、半泣きの赤い瞳、悔しがる握りしめた手、気合いを入れる海猫みたいな細い雄叫び、潔い丸坊主&大谷翔平ぽい長い前髪と整った眉、こだわりの帽子の形、個性光るユニホーム、アンダーストッキングの色合い、読み方の難しいキラネーム。


◌ 応援を楽しむ

調子ノリなスタンド部員の動き、勇ましげな学ランとハチマキ、色白で可憐な目をひく女子生徒、負けずに声を上げる小さい誰かの弟、一喜一憂する誰かの家族、暑すぎて頭にタオルをのせウチワで扇ぐ赤の他人。

アルプスの一番上で、大きな学校旗の一番下の柄を支える、たくましい(たまに細身)男子応援部員。

つい口ずさんでしまう、画一的または自由度の高い校歌、定番のヒッティングマーチ、魔曲化する独自のチャンステーマ、得点時の称えるブラスバンドの奏で、暑さが落ちつきだすと終わりも近づき寂しさがかげるいつまでも聞いていたいBGM。


◌ ゲームを楽しむ

緊張する投手の立ち上がりを狙う、気の強い1番打者のスイング。

誰かが塁に出ると、寝かせて構えるバット越しの広がる2つの瞳孔。

ボールが先行すると、次の球は見送るセオリー。

ノーアウトで塁が埋まると願う、三振か、併殺打か、奇跡のバックホームでタッチアウト。

何度もファウルで逃げ、球数を稼ぎ、ようやっともぎ取ったフォアボールと、ガッツボーズ。

うっかり避けきれず硬いボールが体に当たっても、塁に出れたことを喜ぶ、おかしなハイテンションのガッツポーズ。

良いコースのストライクに思わず白い歯を見せて笑いあう、顔馴染みのバッターとピッチャー。

最近はあまり飛ばない仕様だから、何度も盗塁を試みて、起動破壊す。

隙を見て牽制ボールを送る投手の足先と、滑り込んだランナーの手先から舞い上がる、砂埃の風向き。

ずっとユルめのアウトコースだったのに、急に厳しくなって苦笑を誘う、ボランティア審判さんの飄々ひょうひょうとしたてい

ベンチ前の相手選手の異変に気づき、ペットボトルのお水を差し出す、監督のワンタイム。

一か八かの攻防、飛びついて守りきった味方のファインプレー、奇跡を願って駆け抜ける走者、悔しそうに腕を組んで口をゆがめる年配の参謀、落ちついて解説する元監督もしばらく集中して黙り込む、歴史に言葉を残そうと実況アナウンサーが必死に叫ぶ。

そして、突然あらわれる甲子園名物、高校球児最大の敵、マモノのマモちゃんの渾身こんしんのプレイ。


◌ 美味しいを楽しむ

朝一番からウロつきだす売り子から買う生ビールの泡。

売店の搾りたてレモンサワー。

お寿司屋さんで売ってる冷たいカップ酒、寒いときは熱燗で。

ワインもワイングラス風プラカップで買える。

駅前コンビニでも買える甲子園カレー。

通販送料別でも買える甲子園やきとり、つくね、イカ下足等。

寒いとき特に美味しかった銀だこネギのせ絶対的マヨ入り。でも欲張って2倍の12コ入り食べたときは濃すぎて残した。

おうどんとか、串カツとか、ケンタッキーとか、わりとどれも美味しい。

かき氷とかソフトクリームとかアイス等、スイーツ全般も最高。


◌ グッズを楽しむ

毎年、応援してる高校の対戦ボールとか、対戦ピンバッチ、出場校タオルを集めてる。

それを年替わりで棚に飾ってるけど、将来はもう、棺桶に入れて一緒に連れてくしか使い道ないよね。

そんな推しカツ的な "共にお焚き上げ" グッズ、高校野球以外でもたくさんあるんだけんど、うちの旦那め、うっかり忘れてしまう、そんな予感めっちゃする。

もう耳タコぐらい、しょっちゅう言ってた方がいいのかもしれない。






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ワタクシ的、甲子園における、高校野球の楽しみかた 露氷六子 @mimichips

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