心の洞

 ひらけごまと扉の開くのを待ち

 じっと眠る黒藻くろも

 扉を開ける者の苦労もらず

 ただユラユラと揺れ

 扉の開く時を待つ


 いざ開いてみれば鍾乳石しょうにゅうせきが天井を穿うが

 白い泉のほとりには妖精などはおらず

 色々なことを要請することも忘れ

 ただ培養され養成される幼生の複製体になる


 洞の中を煌々こうこうと照らす炎が唐突に立ち昇り

 誰かが洞の成り立ちを滔々とうとうと語りながら

 どこか苦悶と怒りに満ちた笑みを浮かべる


 緑の茂る泉の畔に寝転び

 黒猫が横切るのも見て見ぬふりをし

 ただ大の字で天井を眺め

 長めの休息を取るもよろ


 洞の奥で宝物を見つけ

 両手を挙げてみはするが

 すぐに手は突風に降ろされ

 体が自ずと後退あとずさ


 

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