<第1話を読んでのレビューです>
冒頭は歩道橋。雑踏の音に混じる「人類滅亡まで残り100秒」という声。それは一瞬の違和感にすぎないはずなのに、物語はその言葉を繰り返し配置し、日常の会話の隙間に差し込んでいきます。構成は単純で、場面の移行も滑らか。しかし、その自然さが逆に緊張を高める仕組みになっています。
個人的に印象的だったのは、
「問題集を閉じて、タツキに向き直った。」
わずかな動作に過ぎないのに、そこには軽い諦めと、友人の真剣さに応じようとする気配がありました。彼らのやりとり全体の空気を、この一行が決定的に変えていたと思います。
終末を告げる情報がSNSや教師の口からも広がり、読者は疑念と不安を共有させられます。それでいて説明に頼らず、淡々と描写を積み重ねている。その距離感が、かえって現実に近い感覚をもたらしていました。物語に身を置いている間、いつ時計が動き出すのか、自然と気を配らされることになりました。