とても生々しく、苦くもリアルな恋愛の一幕を描いた作品でした。
元恋人の残した荷物を整理する、ただそれだけの行為なのに、主人公の心の中には過去の思い出や未練、怒りや哀しみが次々と溢れ出していきます。
その感情の揺れ動きがあまりに人間的でした。
特に、箱の中身をひとつずつ仕分けながらも、記憶や感情が否応なく蘇ってしまう場面が印象的です。
小物や本、アクセサリー、どれも「ただの物」でありながら、二人の関係の証であり、その一つ一つが主人公を翻弄していく。そこに挟まるプリクラの存在は、積み上げてきた思い出を一瞬で崩れさせる衝撃でした。
しかし、この作品は単に「痛み」だけで終わらないところが良かったです。
ラストの展開ですべてがひっくり返ったのは、「こりゃやられた」と思いました。
人の未練や嫉妬、そして再生の瞬間を丁寧に描いた一編。
読んでいて「恋愛とはかくも厄介で、かくも人を強くするのだな」と思わされる作品でした。