第13話 姉の野望、ユウキの決断


エリザベス王女の行動は、レオンの知らないところで着々と進んでいた。彼女は、日本の大手芸能事務所との契約を最終段階まで進め、レオンを世界的スターにするための壮大なプロモーション計画を練り上げていた。彼女の計画には、レオンのプライベートに関する詮索を王室の権威で牽制し、彼のイメージを徹底的に管理することが含まれていた。


エリザベスは、契約書を携え、日本のレオンのマネージャーであるユウキと面会した。場所は都内の高級ホテルのスイートルーム。そこにいるのは、エリザベスと、彼女の側近、そして日本の芸能事務所の社長だった。部屋には厳粛な空気が漂い、テーブルの上には、分厚い契約書が置かれていた。


「ユウキさん。私の弟、レオンは、アルカディア王国の公式アンバサダーとして、日本で活動することになります。彼のプライベートに関する詮索は、今後一切許しません」

エリザベスは、王室の権威を盾に、ユウキに一方的に契約を迫った。彼女の瞳は冷たく、一切の妥協を許さないという強い意志が感じられた。


ユウキは、エリザベスの高圧的な態度に戸惑いながらも、その契約書の内容に目を丸くした。契約書には、レオンの活動に関するあらゆる権限が、王室に移譲されると記されていた。それは、レオンの俳優としてのキャリアだけでなく、彼自身の人生までもが、王室の管理下に置かれることを意味していた。


「エリザベス王女…この契約は、レオンさんの意思を無視しています。それに、レオンさんは、ご自身の力で大スターになりたいと…」


ユウキは、レオンの言葉を思い出し、震える声で反論した。しかし、エリザベスは、ユウキの言葉を冷たく一蹴した。


「それは、子供じみたわがままです。王族には、王族としての義務と責任がある。レオンの才能は、王室のため、そして世界のために使うべきなのよ」


エリザベスの言葉に、ユウキは言葉を失った。彼女の言うことは、王族としての正論だった。しかし、ユウキは、レオンの秘密を知っている。だからこそ、レオンの夢を、誰よりも理解している。彼は、レオンの夢を守るため、エリザベスと対峙することを決意した。

「申し訳ありませんが、その契約書にサインすることはできません」


ユウキの言葉に、エリザベスは驚きを隠せないようだった。王室の権威に逆らう者など、これまでいなかったからだ。

「あなた、自分の立場を理解していますの?この契約を拒否すれば、レオンの日本での活動は、すべて白紙に戻ることになりますのよ」


エリザベスの言葉に、ユウキは震えながらも、レオンの夢を守るために、一つの決断を下した。

「それでも、サインはできません。レオンさんの夢を、私が守ります」

その頃、レオンは、ドラマの撮影現場で、アヤカと二人きりだった。

「レオンさん、無理しなくていいんですよ。あなたが、あなたが望む道を進んでください」

アヤカの言葉は、レオンの心を温かくした。彼は、自分の知らないところで、自分の「嘘」と「真実」が、新たな局面を迎えていることを、まだ知らなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る