第8話 ユウキの決意とレオンの告白


姉のエリザベスが引き起こした「サプライズ」は、レオンの芸能活動に大きな追い風をもたらした。ユウキは、レオンの「王室の知人」という設定を最大限に活用し、次々と仕事のオファーを取り付けていった。レオンは、その勢いに乗り、連ドラの主演、映画のオファー、そしてCM契約と、瞬く間にトップスターへの階段を駆け上がっていく。

しかし、レオンの心は晴れなかった。大スターになればなるほど、彼の私生活は注目され、王族としての秘密が暴かれる危険性が高まる。そして何より、彼が築き上げてきた「嘘」が、ユウキという無邪気な男を巻き込んでいることが、レオンの心を重くしていた。

「ユウキさん…」

レオンは、ユウキに真実を告げるべきか、葛藤していた。喉がカラカラに乾き、心臓が耳元で激しく鳴り響く。しかし、彼は、この嘘の鎖を断ち切るために、重い口を開いた。しかし、ユウキは、レオンの表情に気づくことなく、興奮した様子で話していた。

「レオン!ついにだ!君に、アルカディア王室の公式アンバサダーのオファーが来たんだ!」

レオンは、ユウキの言葉に耳を疑った。それは、レオンがずっと隠してきた「嘘」を、彼自身が公式に認めることを意味していた。

「嘘だろ…?」

レオンは、ユウキに真実を話すことを決意した。

「ユウキさん。僕には、あなたに話さなければならないことがあります」

レオンは、ユウキに自分の過去、そしてアルカディア王国の第二王子であることを打ち明けた。ユウキは、レオンの言葉を信じることができず、笑い飛ばした。

「レオン、冗談はやめてくれよ!そんな突拍子もない話、信じるわけないだろ!」

ユウキの言葉に、レオンは苦笑いするしかなかった。完璧な「嘘」を操る彼でも、真実を話すことの難しさを痛感した。

しかし、その時、ユウキのスマホが鳴った。王室の公式アンバサダーの契約を最終確認するための電話だった。

「はい、佐々木です…ええ…はい、レオナルド・フォン・アルカディア王子ですね。承知いたしました」

ユウキは、電話を切り、レオンを見た。彼の顔は、さっきまでの笑顔から一変し、驚きと困惑に満ちていた。彼はレオンの顔と、スマホの画面を何度も見比べた。信じられない、という顔だったが、その瞳には、徐々にすべてのつじつまが合うように、理解の光が宿っていくのが見えた。

「レオン…お前、本当に…」

レオンは、ユウキの言葉に、何も言い返せなかった。彼の「嘘」の城は、ついに、ユウキの前で崩壊した。

ユウキは、レオンの秘密を知ったことで、彼の才能と、これまで築き上げてきた「嘘」のすべてを理解した。彼は、レオンの苦悩と、彼の才能を、誰よりも理解した。

「レオン…俺は、お前を必ず大スターにする。そして、お前の『嘘』を、いつか真実にしてやる」

ユウキの言葉は、レオンの心に深く響いた。彼は、一人ではない。彼の「嘘」は、もう彼だけのものではなかった。

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