トラック2:綿棒で左耳から耳垢とダメを出しましょう。 【ひざまくら、綿棒で耳かき(左、中)、耳ふ~】

(時間場所:前トラックから続き)

(SE:髪、布がこすれる音。『あなた』がひざまくらへ)


(位置:左、近い)


(やさしい声で)

どうかしら?

私に左耳を向けちゃって、

やっぱり照れる?


(少しいたずらな声で)

ヒロインにひざまくらされるシーンくらい、

過去に何度も書いているのに、

実際にされるのは初めてなのね♪

なら、今後はこの経験を参考に書くように♪


(きょとんとした声で)

タイトスカートが汚れれるとか気にしてる?


(自慢げな声で)

そんなこと気にしなくていいわよ。

かんたんに汚れるような安物を着てないわ。


(甘える声で)

それに、あなたはいつも部屋も身なりも、

清潔にしてるのでしょう?

ならいいじゃない。


(自慢げな声で)

そうよ。


(位置:左、至近)

(声:ささやき、無声、ここのみ)

(色っぽい声で)

私はあなたのこと、よく見てるの。


(声:ささやき、有声、続ける)


(困った声で)

まあ、スランプを抜け出す方法はわからないけど……。


(はしゃいだ声で)

あなたのために耳かきさせて……。


(色っぽい声で)

始めるわよ……。


(SE:左耳中、綿棒で耳かきする音、続ける)


さくさく……さくさく……。


(やさしい声で)

どう?

本当に気持ちいいのね。


(安心した声で)

よかった……。


さわ……さわ……さわ……。


(やさしい声で)

まずは落ち着いて、

それからゆっくりと打ち合わせをしましょう。


(声:ささやき、ここまで)

(位置:左、近い)


(少しまじめな声で)

ええ、これは打ち合わせ。

貴重な時間ですから、

ただ耳かきするだけでは終わらせないわ。

あなたの耳垢を掻き出しながら、

さっきの企画のダメ出しもするの。


じゃりじゃり、じゃりじゃり。


(まじめな声で)

全ボツと言うのはかんたんですが、

そうするだけの理由があるわ。

ボツという短い言葉で否定するのは、

作家さんにもアイディアにも失礼よ。

その失礼をした分だけ、

作品を良くしてあげなきゃでしょう?

それにボツを出すのも、

作家さんに嫌われる覚悟が必要なの……。


(位置:左、至近)

(声:ささやき、有声、続ける)


(甘える声で)

あなたに嫌われないか、

いつも不安なのよ……。


すりすりすり、すりすりすり。


(とても甘える声で)

でもあなたは、

私のこと信じてくれる。

とってもありがたいと思ってるわ……。


(声:ささやき、ここまで)

(SE止め:耳かき一旦止め)


(耳ふ~、やさしく)

ふ~~~。


(SE:左耳中、綿棒で耳かきする音、続ける)

(位置:左、近い)


(まじめな声で)

というわけで、ダメ出しも始めます。

まず、物語の展開について、

予定調和すぎて物足りない感じがするわ。

設定やキャラクターはとても良いのだけれど、

それを活かしきれてないって感じるの。

これ、主人公の設定を「ニンジャの末裔」

ってことにしても、物語が通用する気がするわ。

『サプライズニンジャ理論』みたいに、

物語にニンジャがいたほうが

おもしろくなっちゃうでしょ?


(はしゃいだ声で)

ちょっと笑ったわね。

そういうこと。


ぞりぞりぞり、ぞりぞりぞり。


(まじめな声で)

この設定があるから。

このキャラクターだから。

そんな展開づくりをしていくと、

自然と予定調和ではなくなるでしょう。


(やさしい声で)

それに、ちょっとくらいなら、

いきなり変なことをしても、

読者さんはついてきてくれると思うの。


そりそり……そりそり……。


(SE止め:耳かき一旦止め)


(位置:左、至近)

(声:ささやき、有声、ここのみ)

(甘やかす声で)

私が急に「耳かきをしてあげる」

なんて言い出したように……ね♪


(耳ふ~、やさしく)

ふ~~~~~~。


(位置:左、近い)


(SE:左耳中、綿棒で耳かきする音、続ける)


(まじめな声で、続ける)

物語が予定調和になっちゃうのは、

サブキャラクターの動きが小さい、

って理由もある気がするわ。


個性的なのだから、

個性を活かして動いてもらっていいと思うの。


サブキャラクターが大きな行動を取れば、

主人公やヒロインも大きく動かされるし、

そうしたら恋だって邪魔が増えて、

結果として物語も大きく動くでしょう。


ずるずるずる、ずるずるずる。


(SE止め:耳かき一旦止め)


(位置:左、至近)

(声:ささやき、有声、続ける)


(色っぽい声で)

恋の障害は大きければ大きいほうがよい、

なんていうでしょう?


(耳ふ~、やさしく)

ふ~~~。


(やさしい声で)

彼らなりの行動の理由がちゃんとあるなら、

物語を動かす行いをしてもいいの。


(SE:左耳中、綿棒で耳かきする音、続ける)


するする……するする……。


(きょとんとした声で)

私の耳かきの理由?


(甘える声で)

言ったわよ。

あなたに良い物語を書いてほしい。

本当よ。

これは本当♡


すりすり♡ すりすり♡

すり……♡ すり……♡


(SE止め:耳かき一旦止め)


(耳ふ~、キスみたいに愛情を込めて)

ふ~っ、ふ~っ、ふ~っ♡


(声:ささやき、ここまで)

(位置:左、近い)


(SE:左耳中、綿棒で耳かきする音、続ける)


(まじめな声で、続ける)

もうひとつ。

最近、取材不足じゃなくて?

インプットとアウトプットのバランスが悪い気がするの。

私との打ち合わせのために、

必死にパソコンやメモ帳に向き合ってるわね?


必死になってくれるのはうれしいけど、

あなた、あまり外に出てないでしょ?


ご飯を買いに行っても、

いつも同じものばかり選んでない?

小さな変化や刺激もない生活にしてない?


じょりじょりじょり、じょりじょりじょり。

じょりじょりじょり、じょりじょりじょり。


締切を破って旅行しろとは言わないけど、

時間に余裕があるなら、

旅行や取材に行ってもいいのよ?

スケジュールが不安なら相談してくれてもいいの。


一見、遊んでいるようでも、

作家さんにとっては大切なことだから。


(SE止め:耳かきここまで)


(位置:左、至近)

(声:ささやき、無声、ここのみ)

(やさしい声で)

あなたは、すなおな気持ちで行動して。


(耳ふ~、やさしく)

ふ~~~~~~っ。


(位置:左、近い)


(淡々とした声で)

左の耳かきと企画のダメ出しはおしまい。

思い出せないときは気軽に聞き直して。


(少しはしゃいだ声で)

さ、次は右の耳かきと心構えについてよ。


(少しいたずらな声で)

あら? 甘やかしてくれると思った?


(やさしい声で)

今日は徹底的に耳垢とダメを出すから、

リラックスしながらも、

ちゃんと私の言葉に耳を向けてね。


(甘やかす声で)

はい、ごろん♪

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