STORY1.3-出社-
俺はやっと家に着いた。
家は灰色の小さなアパートの一室だ。
時刻は5:15。どうやらあそこで過ごす時間は通常よりもゆっくりになるらしい。
1時間程度睡眠した後、飯を食う。
トーストにハムと卵を載せて、インスタントの味噌汁を入れる。
飯も食い終わったので、スーツに着替える。
スーツは幸い既に洗濯してあった。
家を出て駅に向かう途中、栞の声が甦った。
俺は人より格別に仕事ができる訳でもなく、毎日生活が楽しいとは思わないが、自殺しようとも思わない。人が自殺をしない理由は人生が楽しいからという事、後は死ぬのが怖いからだという事だと思っている。
どちらの理由がより当てはまるかは人それぞれだが、残念な事に俺は後者の方だった。
そんな事を考えるうちに会社に着いた。
今日はクライアントに対し、商品開発のプレゼンをしなければならない。
俺は今日の午後行うプレゼンの用意をするために自分の机の引き出しを開けた。
「前回置いて行ったプレゼン進行用資料が
どこにもない。最悪の場合、プレゼンが
できなくなる!」
俺は焦ってまず自分の鞄を覗いた。
そして俺は社内の事務室に行ったが、無い。
「どうする…?! プレゼン資料が無いとしても
プレゼン自体は可能だ。しかし資料には
進行の流れ、質疑応答の答弁などもある。
なければそれをアドリブで行う事となる。
今からでも上に説明して打ち合わせを
中止にした方がいいか..?」
悩んでいると、自然と食堂に向かっていた。
悩んでいても、人は腹は減るものだ。
食券を買い、席に向かう。
「よう!そんなしけた面すんなよ!」
後ろから声を掛けられた。
———————————-
彼は柏葉浩。会社の友達だ。
彼は俺の失敗を庇ってくれた恩人でもある。
————————————
柏葉が席につき、口を開く。
「なあ、お前、なんか悩んでる?」
「さっきも券売機の前で立ち止まるなんて
お前らしくなくね?」
その顔は軽薄な彼らしくなく、真剣だった。
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