戦後八十年。
今年の夏は、殊更戦争に関係するものを目にし、耳にしました。
その時期を生きた方が少なくなる中、直接体験談を聞くことなく、テレビや教科書で知識として頭に入れるだけの人も増えてきました。
戦争の悲惨さ、残酷さ。
そういうものももちろん語り継ぐ必要はあると思います。
しかし同時に、今、毎日を平穏に暮らせることの有り難さや、生きていることは当たり前のことではないということも忘れてはならないと思うのです。
作中で認知症の高齢女性が語る内容は、「大変な出来事」の一言では言い表せません。
この作品は物語であっても、確かにあの頃、多くの場面で生かされた生命があったのは確かなこと。
作品を通し、語ることの出来なかった人々の生命に思いを馳せて欲しい、自分が生きていることを考えて欲しいと願います。
一体どれだけの人が、このような思いを胸に抱いているのだろう。
教えてほしい我々世代と、口にすることができない体験を抱えている世代。
もう、あと数年もすれば、本当の言葉は聞けなくなる。
語り継ぐべき言葉たちは、皆、空へと還ってしまう。
だからといって、無理矢理に語らせることもできないのだ。
命は、いつだって繋がれてここにある。
それは先祖代々続く、血縁というものだけではない。
生かされた瞬間というのがあったりもするものだ。
改めてそのことが、胸に響いた。
このお話を読めてよかった。
忘れてはいけないことが書かれている。
多くの方に読んでいただきたいと思う。