第38話 # 危険客を切った理由

タイトルは──『# 危険客を切った理由』


会場の照明が落ちた。

生放送が始まった。

残ったのは中央のスポットひとつ。


ステージに立つのは、夏ただ一人だった。

マイクもBGMもない。

息づかいが聞こえるほどの静けさ。


柔らかな光の中で、夏は口を開く。



「悪い客がいた。

酒の勢いで境界を越え、

笑顔で断っても、言葉は届かない。


……私は若い。

だから舐められる。


歌舞伎町の女たちはみんな知ってる。

“貧しい女は声を上げても、

誰も守ってくれない”」


スポットライトが強くなる


「……でも、店が決めた。

『守るために切る』って。


その瞬間、初めて思ったんだ。

“守られるってこういうことか”って。」


照明が静かに落ちる。


「危険客を切るのは、

逃げじゃなくて“守るための選択”です」



最初、動画の再生数だけが静かに伸びていた。

コメント欄は空白のまま、誰も言葉を残さない。


「…引かれたんじゃねえのか?」

佐川が怯む

「いや、ここからだ」

店長だけは数字から目を離さなかった




ひとつのコメントをきっかけに、

堰を切ったように言葉が溢れた


〈私も似た経験あります〉



〈昔、客に家までつけられたけど、

店が出禁にしてくれた〉

〈よくぞ言ってくれた〉

〈ここ、Q.E.Dだっけ?境界を守ってくれる店は信用できる〉


「おいおい。どう言うことだよ…」


「悪評は火事だ。放っておけば燃え広がるが、正しく制御すれば暖になる」


夏は売上表を見て、ふっと微笑んだ。

かつて〈Q.E.D.〉で追いかけていたのは、視聴率のような冷たい数字だけ。

けれど今は違う。

自分の演技が、確かに人の心を揺らしている。


「……うん。

やっぱり私は、女優に戻ってよかった」


【ルナの休業8日目

日商 2,000万 → 600万

店の売り上げ-70%減 (維持)】


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