第27話 水商売は無力である

(断るだけじゃ逆効果……。

江口さんは“自分は特別”だと思いたいだけ。

なら、送迎を否定するんじゃなく

“もっと価値ある応援方法”にすり替える。)


「…月子ちゃん?」


ルナは一歩引いて微笑む。

「そのお気持ちだけで十分です。」


「いや、僕は月子ちゃんを応援して…」


「もし本当に応援していただけるなら……

次に来ていただいた時に、また『数字』の話をさせてください。


送っていただくよりも、そっちの方が私にとって価値があります」


江口はしばらく考えた。

「うん。わかったよ月子ちゃん。また明日ね」

やけにあっさりだった。

タクシーが来る。ルナは飛び入るようにタクシーに乗った。


「お客さんどちらまで」

「…どこか遠くの交番まで。」

「は?」


ルナはやっと呼吸ができた。

タクシーの鏡越しで遠くなる江口の瞳と

目が合う。


"また明日ね"


その言葉が重くのしかかる。


(……江口さんは今回で、完全に一線を越えた)


──タクシーで交番に向かった。


「……それで、深夜に道の前で立っていたんです。」

ルナは必死に説明した。


だが警官は書類に目を落としたまま、重い声を返す。

「水商売のお客さんでしょ?付き合い方は自己責任になるからねぇ」

「……自己責任?」

「危害が加えられたなら動けるけど……まだ何もされてないでしょ?」

「それに君が嘘をついてるかもしれないし」


その一言に、ルナの喉が詰まった。

「……ここまで信用されないものなの?」


帰り道、歌舞伎町のネオンはいつもと同じに輝いていた。

けれどその中に自分を守ってくれる光は、どこにもない。


(私……数字では勝ってても、この街では守られないんだ)


初めて、自分の「個人」としての弱さを思い知らされた。

数字の式では測れない孤独が、胸を締めつける。

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